A-2


軍事統括本部:TESLA

ここは、AIAIの中央都市にある軍事施設であり、その全貌は国の心臓とも言えるNIKORAを囲むようにして建てられた施設である。


TESLAに到着した僕は、専用ゲートから中に入る為に赤切符の中に入っていたリングを装着し、ゲートにいるセキュリティアニマルの頭に手を置く。

4つのゲートにそれぞれいる彼らは、ここで守衛の役割を担っており、彼らに触れ、首輪の鈴が青色になればゲートを通ることが出来るという仕組みだ。


(なぜバナナの皮の帽子を被っているんだろう…誰かが被せたのかな?)


愛らしい彼らの横を通り過ぎ、中に入る。

すると、背後から声が聞こえて来た。


「え、えっと、あの!すみません!そこの人!助けてもらえませんか!」


声がした方へ顔を向けると、薄いクリーム色の髪をした女性がセキュリティアニマルに進路を妨害されており、よく見ると、首輪の色が黄色に変色していた。


「すみません!この子がゲートを通してくれなくて困ってて……助けてもらえたりしませんか…」

「ああ、多分リングをつけてないからじゃないですか?多分ですけど、あなたも招集された人ですよね?だったら、赤切符にリングが入ってたはずですのでそれをつけて彼らに触れればいいんですよ」

「あ……そうなんですね!確かポケットに入れたはずなんですけど…あれっ…ない…どこだろ…あれ?……………………………あった!!!」


彼女はあらゆるポケットにゴソゴソと手を突っ込みリングを探していた。そして、やっと見つけたようだった。


「ごめんねぇ。触るね、……あっ!青になりました!」


彼女はセキュリティアニマルに触れ中に入って来ることが出来た。


「良かったですね。それじゃあ僕はこれで」

「あっ!…あの!ありがとうございました!」


お礼を言う彼女に軽く手を振り、僕は1人で足早に建物内に入って行った。



(さっきの子、絶対一緒に中に入ると思ってたよなぁ。でも、カフェでのことがあったせいか1人がいいって思っちゃったんだよね。いやぁ、少し悪いことをしたかも…)


後悔の念を抱きつつ、僕は案内ロボに連れられシアターホールに来ていた。

そこには多くの招集された人達が集まっていた。

中央には大きなホログラムの球体が台座の上にあり、そこには"各自席に着き、時間まで待機せよ"

の文字が映し出されていた。


席はホログラムを囲むようにして設けられていて、各々好きな所に座っているようだった。


(取り敢えず、目立たなそうな上段の所にでも座ろうかな)


暫く時間がありそうだったので、タブレットで好きなボカロを聴いていると横に誰かが座って来た。


「よぉ、よこ失礼するぜ」


黒髪のおっさんだった。彼は僕の聞いているタブレット画面を覗き込み顔を明るくした。


「お!あんた、chill chill聴いてんのか!いいよなぁ彼女の声!それに曲調もアップテンポでノリやすいんだよなぁ!…あんた名前は?ヒューマノイドか?」

「凄いマシンガントークですね。なんか、圧倒されちゃいましたよ。僕はOliver型SIN130って言います」

「おぉ…やっぱりヒューマノイドだったか!あんた達は顔が整ってるから大体分かるよ。でも、名前が機械的なんだよなぁ、、、、じゃあシンって呼ぶわな!」

「おじさんの名前は何て言うんですか?」

「おい。誰がおじさんだっつーの!俺はまだ21だ!」

「えっ!」


到底20代の男性には見えず驚愕してしまった。


「おいおい…傷つくねぇ。まあ、あんたらからしたら俺がおっさんだろうがなんだろうが人生の後輩になっちまうんだろうけどな。…………はぁーでもおっさんかぁ。だからさっき若い奴に挨拶されたのか…」


多分、彼は僕に会う前に何人かの若者にこの施設の局員か先生だと勘違いされたのだろう。だが、彼らの気持ちは痛い程分かる。どう見てもおっさんだ。

人間は早いうちから老けるのだと学んだ日となった。


「あー、そういえば俺の名前言ってなかったな、俺はダビデだ。ちなみに人間だからな、宜しくシン」


彼はそう言うや否や、こぶしを前に出し何かを待っていた。


「?」

「なんだよ、グータッチも知らないのか?…こーやってな、拳と拳を合わせる挨拶みたいなもんだよ」


すると、彼は僕の手を取り自分の拳と合わせた。


「……………よろしく…お願いします。ダディ」

「あぁ、よろしく……って。おい!早速変なあだ名つけやがったな!それだと、老けた印象が拭えなくなるじゃねぇーか!」

「ははっ」



僕は珍しく声を出して笑ってしまった。

彼はなんというか不思議な人だ。うるさいけれど、人間らしく温かい印象を与える人物であった。

そんな人と会話をしたから、僕も笑ってしまったのかもしれない。


彼と話していて時間が経ったのか、大分席に着く人が増えた。


すると、ホールにアレッサの声が響き渡った。


"会場の人数が規定値に達しました。なので自動メッセージを再生します"


アレッサの声が聞こえなくなると、ホログラムに1人の女性が映し出された。












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