A-3


"皆さん、初めまして。私はNIKORA。生命創生コアと言った方が分かりやすいでしょうか。このホログラムは私が作り出したAIの一つであり、皆さんとより深く関わりを持つ為に創り出しました。ここには、私の子供であるOliver型、Olivia型のヒューマノイドの他に人間もいることでしょう。あなた方はシステムによりランダムに選ばれました。そして、これはTESLAに属する兵の数が減少したことを意味します。なぜ減ったのか。それは多くのものが死に、国の為に戦う兵を補充しなければならないからです。あなた方の大半が兵隊として戦うことを恐れているでしょう。ですが、赤切符を出してまで徴兵を行わなければ誰も戦いたがらないのも事実。ただの機械兵を創り出し、戦わせることも可能です。ですが、機械は己で考えることが出来ず、起点を聞かせて動くと言うことも出来ない。より強い金属の兵を造ったとしても規定の動きしか出来ず、すぐに壊滅します。私はそのようなゴミに資源を費やす気はありません。その為に、あなた方が必要なのです。

ご理解いただけましたでしょうか?……もし、ご理解いただけないとしても徴兵されたあなた方に逃げ道はありません。戦いに出向き勝つしか道はないのです。多くの死んだもの達の為にも、国の為にも戦って下さい。……私の口上は以上です。そして、これからあなた方には戦う敵について知っていただきます。何と戦うのかを理解した上で戦場に赴いて下さい。それでは皆さんご武運を"


長いNIKORAの口上が終わり、音声がアレッサに切り替わる。


"ホログラムをNIKORAからMERGE(マージ)に変更。……切り替え完了しました。MERGEのデータを添付中………添付完了しました。音声システムをオフにします"


「ありがとう、アレッサ。さてここからは私の時間だ。人間の諸君はくれぐれも寝ないように、寝た奴にはミントオイルをぶっかけるよ」


アレッサの音声システムがオフになると、暗がりから1人の女性が現れた。彼女の両腕はなく、代わりに金属の腕が付いていた。


「あー、まず私はここでMERGEの研究や武器の技術顧問をしているヴァズ・B・バーブチカだ。ヴァズやBB、チカちゃんとか色々言われてるから好きに呼んで欲しい」


「それで、私は君たち新米軍兵達にMERGEとはなんなのか。どう倒すのかを教えることになる。…君たちはMERGEの存在は知っているだろう?だが、詳しくは知らない。……まずこのホログラムを見て欲しい。彼らの種類は主に4つ。エース、キング、クイーン、ジャック。それぞれが黒く巨大な体を持ち、異なった武器を持つ。キングとクイーンは剣を、エースは槍を、ジャックは大鎌を使う。そして、4体のMERGEの周りには小さい四つ脚のMERGEがいるが、そいつらは4体とは違って戦闘力は低い。だけど、数が多いからくれぐれも油断しないように。………そうそう、彼らがどこから来たのか疑問に思ってるものも多いだろうから、答えよう。…………それは私も知らん」


(えっ!知らないの?MERGEを研究してるのに?)


「おいおい、あんた。えっと…バーブチカ…チカちゃん、でいいのか?…んで、なんで専門的に研究してるあんたがあいつらの正体をしらねぇんだよ」


横のアホ……じゃなかった。横にいるダビデが皆が思ったであろう疑問を彼女に投げかける。


「あぁ、やっぱりそう思うよね。でも、私は正体を知らないとは言っていないよ?"どこから"来るのか分からないと言ったんだ。……まぁ、取り敢えず最後まで聞いてくれ。あいつらの正体は人の怨念。核により死んでいった8割の人々の黒く、淀んだ、忌み者の結晶体。…それがあいつらの正体なんだよ。そして、奴らは必ず4時44分の朝と暮れに姿を現し、2時間程で消えていく。おそらく、日の出と日の入りに関係しているんだろうね。これに関しては、まだ研究中だから断定することは出来ないんだ、すまないね。どこから来るのかに関しては本当に分からないんだ。時間になると空間の亀裂と共に現れる。はぁ、私も知れるならとっくに世間に発表して根絶する方法を模索しているさ。……………あと、胸の所にある核を壊せば消えるから。重点的にそこを狙ってくれ。それがあいつらの倒し方だ。………これで大体の説明は以上だよ。長くなってすまない。これから君たちは武器を造り、東西南北に存在するそれぞれの部署に行ってもらうことになるから。後のことはアレッサの指示に従ってくれ。じゃあ、行ってらっしゃい新兵諸君」


彼女はMERGEについて知っていることをおおよそ話し扉から出ていってしまった。話の合間に寝ているものにミントオイルをかけ、室内に悲鳴がこだましている場面もあったりはしたが……


"それでは皆さん、これから人間とAIの2つのグループに分かれていただき、それぞれの部屋にご案内致します。人間とAIでは持つ武器が異なりますのでくれぐれもグループを間違わないようお気をつけ下さい。それでは、人間の方は左を、AIの方は右の扉を通って移動を開始して下さい"


アレッサの指示に従い、扉に向かう。


「シン、また会えたら会おうな!」

「うん、ダディ」

「ダディじゃねえって」


僕とダビデはお互いに拳を合わせ、別々の扉に向かっていった。

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