第6話 ムチムチスライムを求めて

 青いスライムも、グリーンスライム同様に身体が半透明なので、体内のコアが丸見えになっている。

 あのコアを一突きすれば、きっと倒せるはずだから、気付かれないように慎重に近付いていく。

 とはいえ、この青いスライムもグリーンスライムも、どちらも目がある訳でもないので、どこを向いているのかは分からないんだけどね。

 スライムの進行方向的に、きっと背後から近付いていると信じて……今だっ!


「やぁっ! ……ふわぁっ! な、何これぇぇぇっ!」


 グリーンスライムの時と同じように、フルーレでコアを一突きにしようとしたところで、青いスライムがネバネバの液体を飛ばしてきた。

 こんなのを飛ばしてくるとは思ってもみなかったので、全く避ける事が出来ず、左手と脇腹に直撃する。

 ネバネバで気持ち悪い……けど、右手は無事なので、思いっきりコアを突き刺す。


「えっ!? ちゃんと突いたのに……だったら、もう一度っ!」


 一突きでは倒す事が出来なかったけど、三回程突いて、ようやく青いスライムが動かなくなった。

 ただ、その間にいろんなところにネバネバの液を掛けられてしまったけど。


「とりあえず、毒とか溶けたりするようなものではない……のかな? 凄く動きにくいけど……それより、このスライムの弾力だ」


 青いスライムを拾い上げると、グリーンスライムよりは弾力があり、ムニムニしている。

 うん。グリーンスライムよりは、王女様の太ももに近い。

 だけど、まだあのムチムチ感には届かないな。

 とはいえ、ネバネバの液で動きにくいし、一旦街へ帰ろう。

 これまでのグリーンスライムを入れていた大きな袋とは分けて、別の袋に青いスライムを入れ……あれ?


「……って、ウソ!? 右足と左足がくっついてる!?」


 スライムを拾った時に、両脚についたネバネバの液がくっついちゃったんだ!

 全く動かない訳ではないけれど、ヨチヨチと小さな歩幅でしか歩けない。

 うぅ……街は見えているのに、凄く遠く感じる。

 この歩幅だと、草むらの中を歩くのは大変だから、まずは街道に出よう。

 真っすぐ街道に向かっていると……えっ!? また青いスライム!?


「ちょ、待って! 戦う気はないんだけど……もしかして、さっき仲間を倒したから怒っているの!?」


 青いスライムが僕に向かって来て、またネバネバの液を飛ばしてきた。

 まずい。逃げなきゃ!

 何とか顔にネバネバがかかるのだけは防いでいるけど、これが顔に貼り付いてしまったら、きっと呼吸が出来なくなって死んじゃう!

 青いスライム……グリーンスライムと違って、危険な魔物だったんだ!


「えいっ! えーいっ!」


 何とか青いスライムを倒したけど、脚に受けたネバネバで完全に歩けなくなってしまったし、しゃがみ込んでまた何処かがくっついてしまったら目も当てられない。

 なので、動かなくなったスライムもそのままに、ピョンピョンと小さく両脚でジャンプしながら街道へ。

 もう少しで街道に出られるというところで……


「あっ!」


 着地した所に小さなグリーンスライムがいたみたいで、滑ってうつ伏せに転んでしまった。

 顔と右腕以外はネバネバまみれなので、起き上がる事も出来ず、何とか草むらを這って街道へ……ダメだ。

 ネバネバが草に絡みついて、動けなくなってしまった。

 うぅ……僕はもう家に帰れないの? お父さんから任されたお店に、僕を頼ってくれたカレンさんや王女様の依頼もこなせず、死んじゃうのかな?

 そんな事を考えていると、涙が出てきて、ちょっとだけ泣いてしまった。


「うわーん……」

「ん? 子供が泣いて……って、アルス君!? 大丈夫かい!?」


 誰かに名前を呼ばれて顔を上げると、肌色の間に黒い三角形……何これ?


「これは……ブルースライムの粘液にやられたのか。とりあえず街へ戻ろうか」


 そう言って、誰かが僕を抱きかかえ……って、カレさん!?


「勇者様。その子供は……?」

「私の友人だ。人命救助を優先する為、本日の演習は中止とし、街へ帰還する!」

「畏まりました。仕方ありませんね。そちらの子供は我々で運びますよ?」

「いや、私にとって弟のような存在なんだ。このまま私が抱きかかえていくよ」


 どうやら偶然通りかかったカレンさんが助けてくれたみたいで、お姫様抱っこされて街へ帰る事になってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る