第六話 AI導入の今、人口減は必ずも負ではない

 布教活動に気を良くしていた宣教師たちは調子に乗っていた。ルイス・フロイスは活動日記にこう残している。キリスト教に対し、否定的な態度を見せた戦国大名たちを苔降ろしていた。秀吉については「目が飛び出した醜い容姿。極度に淫蕩で悪徳に汚れ、獣浴に耽溺していた品性に欠ける人物」とし、明智光秀には「裏切り好きで残酷な嫌われ者の嘘つき。悪魔と友人でゴマ摺上手」と綴っている。宣教師もひと皮剝けば普通の人間であることを物語っている。

 大内純忠がイエズス会に長崎を寄進してしまったことから秀吉の怒りを買った。イエズス会の領地が生まれることはその背後のスペインの植民地になったこと同じと秀吉は考えた。さらに宣教師が日本人の奴隷売買に関与していたことを知り、彼らの存在はは宗教的なものだけではなく、政治的なものだと察した。その頃、宣教師ガスパール・コエリョがキリシタン大名の支援のためフィリピンに艦隊派遣の要請を出していたや軍事力を見せつけ挑発的な行為も秀吉が知ることになる。秀吉はイエズス会を西洋の諜報員として警戒し、1587年バテレン禁止令を配布した。

 現在日本にも利益供与やハニートラップ、領海侵犯や難癖を付けてくる国が存在する。政府の人間には、先人が行ったような事前に毅然たる態度を取ることが求められている。ただ、秀吉が行ったバテレン禁止令は布教を禁じただけで信仰を禁止にはしなかった。そこには貿易の利益を優先する行為があり、布教や宣教師の存在は黙認されていた。古参の宣教師は大人しくなったが新参者の宣教師は図に乗って、忠告を甘く見て神社仏閣を破壊したり、仏教や神道をこき下ろすことが頻発した。その頃、漂流したスペイン船の船員が「スペインは日本を征服するため宣教師を送り込んだ。日本もスペインに征服される」と明かした。これによって宣教師とキリスト教は日本から追い出された。この船員の発言は、ポルトガル人からスペインが日本を征服されると聞かされ、幕府が漂流したスペイン船の積み荷を没収した腹いせからのものではないか。スペインとポルトガルは日本との貿易面でライバル関係にあり、商売敵を陥れものであった可能性は拭えない。

 とは言っても宣教師が力を点け政治に口出しし、領土まで取られていては黙って見過ごせるものではない。秀吉は暴動を起こした者を処罰した。それでも政治的にキリスト教弾圧までには至ってはいない。その後、徳川家康の時代になって完膚なき弾圧が実施される。

 抜け道を用意し、玉虫色の決断は、真似をしてもらいたくない。起因があって結論がある。過程はどうであれ、結論が危険視されれば、備えあれば憂いなしで対処し、様子を伺うのが予防策の最善だと考えられる。


 禅問答のような気質を備えた日本人は、海外から見ると単なる精神論では済まされない理解不能な強さに映ったこらこそ、GHQは国の政治から神道を切り離す「神道指令」を発し、日本書紀に記されている建国の理念で、世界の隅々までも一つの家族のように仲良く暮らしていける国にしていこうではないかという意味の「八紘一字」と言葉も禁止した。一神教には理解できない多神教の考え。神が人間の平穏を与える存在なら、彼らが進行する神が原因で戦争が起こるのか。悪を作り出した神は、信じるべき神なのか信仰の在り方や神の存在意義を世界で問う時期に来たのかも知れない。

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