第8話 親友

俺は後ろを向き、全力で走った。


しかし、スピードでは勝てない。

すぐに追いつかれ俺に噛み付こうとする。


ガゥッ__


「はぁぁぁ!」


俺が噛まれるその瞬間、ハリーの声が響く。


ザクッ


ハリーが上から現れ、怪物を両断した。


「父しゃん!それにアートまで!」


「ルイス!無事で良かった」


「ルイス…生きててよかった」


父さん!絶対に助けに来てくれるって信じてたよ!


「それにしてもこの怪物は…間違いない。

デスティザークの1st、ティフィラス・ザークの『キメラ生成者 幻想級』で作ったキメラだろう」


幻想級!?

俺が今まで見た中では1番高い…

デスティザークはそれほどまでに強い相手なのか。


「奴らも逃げたことだし、暫くは安全だろう」




それから、デスティザークの拠点にいた残党は捕まえられ、攫われた子供たちも全員無事に救出された。


その後、王都に戻りマリーやアリス達と合流し家族全員で家に帰った。


今日起きたことは騎士たちが調査を引き継いでくれるとの事だ。

無事に解決することを祈っておこう。




◆◆◆




「『上級剣士 屈強級』かぁ、俺様の計画をよくも邪魔してくれたなぁ。俺様の大切な実験体をよぉ。

人間はなぁ、いい筋肉が付いてて使いやすいんだよなぁ」


薄暗い地下室で不気味な男が呟く。


「ティフィラス様、実験体が揃いました」


「コボルトとウルフと人間の相性は良かったよなぁ。

次はドラゴンとオーガとレッドグリズリーだぁ。

これは最高の作品になりそうだなぁ。

ひゃっひゃっひゃっひゃ」


ティフィラスという男は、不気味な笑顔を浮かべながら高々と笑った。




◆◆◆




ついにやってきた。

今日はなんとアリス姉ちゃんの誕生日なのさ!


色々な貴族たちが来るし、美味しいご飯がいっぱいある!

もう一度言おう、美味しいご飯がいっぱいある!


「ルイスどう!似合ってる?」


アリスが俺に見せつけるようにくるりと1回転する。


「はい!すごく似合ってましゅ!」


「じゃあ行ってくるね!」


アリスは舞台の方に走っていった。


「皆の者!本日はよく集まってくれた!私の娘アリスが5歳の誕生日を迎える!これからの成長を願って、乾杯!」


「「「乾杯!!!」」」


始まったみたいだ。

早速俺は美味しいものでも探しますかね。


俺はお皿を手に取りテーブルを回った。


「あのすみましぇん。あれ取って貰えますか」


「ええ、いいわよ。はい」


「ありがとうございましゅ」


うーん。

テーブルに届かないから声掛けて取ってもらっているけど効率悪いし申し訳ないなー。


一通り食べたら休憩するか。


俺はテーブルに着いては声をかけ、美味しそうなものを取ってもらいお皿を満たした。


俺が座れそうな場所を探していると、男子3人組が近づいてきた。


「おやおや、ルイスじゃないですか!

パーティーなのに1人で食べ物を頬張ることしか出来ないなんて可哀想だな~」


「可愛そうでやんすね~」


「惨めでやんすね~」


うわー…俺こいつら嫌いだわ。


こいつらは地元で嫌われている3人組だ。

特に真ん中の偉そうなやつがヨカフ・トンシーだ。

そしてその隣にいる2人がクリッツ・スケークとクリット・スケークだ。通称クリスケと呼ばれている。


こいつらとは関わらない方がいいな。

さっさと逃げよう。


「ほっといてくれ」


俺は直ぐにその場から去り落ち着いた場所を探した。


あそことかいいかもな。


俺は外れにある椅子に座り取ってきた料理を口へ運ぶ。


この噛めば噛むほど溢れてくる肉汁。ステーキソースといい感じに絡み合って___


「美味しい?」


「すごく美味しい!ってあれ?アート?」


「奇遇だね。実は僕のお兄ちゃんが5歳でパーティーにレイン家も招かれたんだよね」


「なるほど。また会えてよかった!」


それから俺たちはあの日のことを話し合った。


アートが逃げたあの後、俺は砂をかけて頑張って耐えていたことや、アートが父さんを呼んでくれたことを聞いた。


「あの時は本当にありがとう」


「こちらこそありがとう。これからもよろしくね!」


「うん!よろしく!」


俺とアートはお互い見つめ合い握手を交わした。


この世界に来て初めて親友と呼べる仲間ができた気がした。


アートにはこれからもお世話になるかもな。


「では皆様これよりダンスの時間とさせていただきます」


俺たちが話し込んでるとダンスが始まった。


「ルイス、ダンスだって!見に行こ」


「ああ、ちょっと待ってよアート」


アートはダンスが始まるとすぐさま屋敷の中央へ向かった。


「ねえルイス!あの人すごく綺麗だよ」


アートの指さす先には華麗に踊る赤髪の少女がいた。


確かに綺麗だ。歳は俺たちと同じ3歳くらい。


「アート?」


アートの顔を覗くと、頬を赤らめその少女から目を離せなくなっていた。


あちゃ、これは一目惚れってやつだ。


「僕、あの子に名前を聞きに行ってくる!」


アートはダンスが終わるとすぐに少女に向かっていった。


これはこれは、アートも男の子ですなあ。

後で結果を聞かせてもらおっと。


ダンスの後、ほかの貴族たちは帰宅の準備を済ませ、無事にパーティーは終わりを迎えた。




「アート!どうだった?」


「あの女の子のこと?」


「名前とか聞けたの?」


「聞けたよ。

あの子の名前はシシー・マイナライトだって。マイナライト家の長女で、なんと僕たちと同い年だったよ」


マイナライト家って隣のアスタリスト王国の貴族じゃなかったっけ?

隣国の貴族まで集まるなんて、父さんって結構お偉かったりするのか?


「僕、大人になったらシシーに告白する」


これは本気ですなあ。

アートよ、頑張れ!

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