第7話 デスティザーク

遡ること少し前…


「お母さん私これにする!」


「可愛いわね!じゃあこれを買いましょ」


マリーは服を手に取りレジへ持って行った。

そして会計を済ませハリーが待っているところに向かう。


「あなた、ルイスちゃんおまた…せ?」


「?どうしたんだマリー?」


「ルイスちゃんは!?ルイスちゃんが居ない!」


「そんなことない!さっきまでここにいたは…ず…」


「どうしましょう、どうしましょう…」


マリーが円を描くように早歩きをして慌てる。


「落ち着くんだマリー。一旦冷静になろう」


「でも、ルイスちゃんが__」


「頼もう!我々はフォンテル王国の騎士だ!」


胸元にフォンテル王国の紋章のある甲冑を纏った騎士が、服屋の扉を強く開けた。


「最近この辺りで人攫いの目撃情報がある。なんでも、そいつらはあの悪の組織デスティザークに関係するものと思われる。」


「…!?なんてこと…ルイスちゃんは…」


「まだ決まった訳じゃない」


「これはこれはフール様方では無いですか。どうかなされたのですか?」


騎士が状況を察し質問する。


「私の息子が攫われたかもしれないの」


「それは本当ですか!?すぐに捜索に取り掛からせて頂きます!」


「デスティザークの拠点の位置は掴めているのか?」


「はい。恐らくライリック王国の国境付近かと」


「わかった。ならば私が軍を率いよう」


「あなた…気をつけるのよ」


「ああ、大丈夫だ」



ハリーはすぐさま家へ帰り準備に取り掛かった。

その後、人脈を駆使しすぐさま100人程の軍を結成した。



「もうすぐ日が落ちる。日が落ちたら突撃するぞ!」


「「「はい!」」」


『下級剣士 普通級』から『中級剣士 有能級』にわたる100人が列を成して移動する。


小規模の軍を率い2時間程移動し、ライクリック王国との国境に到着した。


「見つけた…あれがデスティザークの拠点か。

皆の者!拠点を発見した!日が落ちると共に特攻する準備は出来てるか!」


「「「おおぉぉ!!」」」


ハリーの声によって兵士たちの士気が高まる。


太陽が少しずつ身を隠していき、静寂が続く…


そして、ついに太陽が姿を隠した。


「突撃!!」


「「「うぉぉぉぉ!!」」」


100人もの兵士が、デスティザークの拠点に向かって一斉に走り出す。


ドカンッ、ドカンッ


奥から水色の巨体を持った魔物が出てくる。


「あれは…トロールか!」


「うわぁ!」


トロールの巨大な一撃が兵士たちを跳ね飛ばす。


「『中級剣士 有能級』じゃ歯が立たない。私が行く。

はあぁぁぁ!」


ハリーは素早くトロールに接近し剣を抜く。

そして地面を強く蹴り高く飛ぶ。その高さはトロールの巨体を軽々と越した。


「これで終わりだ!」


ハリーは急降下しトロールの体を両断する。


「さすがですフール様!」


「君たちは建物の中に入り誘拐された子供を探せ」


「「はい!」」


無事にルイスが見つかればいいが__


パチパチパチパチ


ハリーがルイスのことを考えていると、どこからか拍手の音が聞こえた。


「さすがは『上級剣士 屈強級』と言ったところですか」


上空から不思議な男が、ドラゴンに乗り現れる。


「貴様は何者だ!」


「私はデスティザーク3rd、シベルト・アッカーと申します。以後お見知り置きを」


「3rd!?」


ドラゴンに乗っていることからやつの職は『テイマー 屈強級』。

同じ屈強級でも相性が悪い。

ここで戦っても俺が負けてしまう。


「見ての通り私のジョブは『テイマー 屈強級』です。

あのトロールは私が育て上げたものだったのですが、残念でした。

私にはやることがありますのでこの辺でお暇させていただきます」


シベルトはそう言い去っていった。


「助かった…」


彼は一体何がしたかったのだろうか…


「フール様!」


ハリーがほっとしていると兵士が子供を抱き抱え走ってきた。


「ハリー様!こちらの子供がルイス様の場所を知っているそうです!」


兵士の腕に抱えられていた子供はアートだった。


「君は!レイン家のご子息ではないか!」


「ルイスが!早く助けないと!」


「早くその場所へ案内してくれ!」


「あっち!」


「行くぞ!」


ハリーはアートを抱き抱え指さす方向に向かった。


間に合ってくれ…!




◆◆◆




アートは無事に逃げきれたかな。


「グルゥゥゥ」


俺は今怪物と対峙している。

コボルトの頭にウルフの手足、人間の体を持つ怪物だ。


「ガゥッ!」


怪物が噛み付こうと飛びかかってくる。


「えいっ!」


俺は下から砂を掴み取りコボルトの顔にかける。


「キャンッ」


砂をかけられ怪物が少し怯む。


この作業をかれこれ数十回ほど繰り返している。

これで時間を稼げば、父さん達が見つけれくれるだろうと信じているからだ。


本で訓練をしていたおかげで身体の扱いには慣れてきた。

しっかりと構えていれば避けることもできる。


しかし、もうすぐ日が暮れる。


ここは森の中、夜になれば暗くなり砂が命中しずらくなる。さらに、魔物まで現れる可能性がある。


「ガゥッ!」


「えいっ!」


「キャンッ」


暗くなってきた…


「ガゥッ!」


「えいっ!」


砂を掴み取り投げる。

しかし、周りを既に暗くなり敵の位置が正確に掴めない。


「まずい!」


ガブッ


砂は怪物に当たらず気づいたら右手を噛まれていた。


「離せ!」


俺は力を振り絞り怪物を薙ぎ払う。


何とか振り払うことは出来たが、今ので俺の右手は動かなくなった。

もう砂を投げることは出来ない。


「っ!」


俺は後ろを向き、全力で走った。


しかし、スピードでは勝てない。

すぐに追いつかれ俺に噛み付こうとする。


暗くてよく見えない。

避けるのは難しいか…


ガゥッ__

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