第9話 姉妹

「マリー!頑張るんだ!」


「うぅぅぅ」


「もう少しだ!」


「あなた、うぅぅ」


今の状況を説明しよう。


アートと出会ってから2年が経ち俺は5歳、アリス姉ちゃんは7歳になった。


そして今、新しく兄弟が産まれようとしているのだ。


「産まれたぞ!女の子だ!」


「はぁ、はぁ、良かった」


「名前はどうする?」


「女の子だからアリシアとかかしら?」


「でもアリシアはお姉ちゃんぽい名前じゃないか?」


「そうねぇ…」


女の子の名前か。


俺は腕を組み考える。


俺の脳内にいい名前が思い浮かんだ。


「テリア!」


「テリア?いい名前ね」


「それにしよう!テリア!君の名前はテリア・フールだ!」


自分が考えた名前が採用されるのって嬉しいね。

あの2人に考えさせたら酷い名前になりそうだし。さすがに酷い名前は可哀想だからね。

アリスとテリア、すごく姉妹っぽい名前で我ながらネーミングセンスあるなあ。


というわけで、我が家にはテリアが加わり3人兄弟となった。




テリアが産まれてからは、俺は5歳ということで勉強が始まった。


「ルイス様今日も計算を始めますよ」


このいかにも厳しそうな人は僕の教師のジュリアン先生だ。


実際すごく厳しい。

歴史の授業とかすごく退屈で眠くなってしまう。

だが、少しでも寝てるのがばれたらチョークが飛んでくるほどだ。


しかし、俺は勉強をするのは嫌いじゃない。

前世でも真面目な方だったし、成績も良かった方だと思う。


この世界の勉強には4科目ある。


計算と作法、歴史と政治だ。


作法はある程度常識を持っていれば簡単だし、政治も仕組みが分かれば楽しい。歴史も頑張れば覚えられる。

そして計算なんだが…


「今日はこれを解いてもらいます。

いくらあなたでもこれは解けないでしょうが、挫けずに頑張ってください」


俺は渡された紙に書いてある問題を見る。


なるほどなるほど、10×かける15か。

これなら暗算で余裕だな。

つまり答えは___


「150ですね!」


「なっ、ぐぬぬ…せ、正解…です…」


「これくらい簡単ですよ。

もっと難しいのないのですか?」


「これが簡単ですって!?

これは大人でもごく一部の人しか解くことが出来ない難問ですのよ!?」


これが難問って言われてもなあー。

こんなの小学生レベルじゃないか。


いつも厳しくされてるからちょっと意地悪しちゃおうかなー。


「じゃあ先生!僕からも問題出していいですか?」


「え、ええ。どうぞ」


どうせ5歳の子供が考える問題だからってなめてるんだろ!

むずいのだしてやろ。


「2xエックス×かける2マイナス4イコール0のxエックスの値を求めてください」


「こんなの…解けるわけないじゃないですか!

このxエックスを使った計算式は過去に先代王族が作ったとされてますが、それ以降誰も解けてないのです」


いや、これくらいなら頑張れば解けるでしょ!?

そんなにレベル高いのこれ。


「ルイス様はもしかして解けるのですか…?」


「解けますよ。これの答えは1です」


「っ!?」


「簡単ですよ」


まあ、見ての通り計算の授業はものすごく簡単だ。

前世は現役高校生だったんだからね!そりゃ簡単に解けるさ。


それに、あの厳しいジュリアン先生をぎゃふんと言わせることができる。

それが面白いから計算は楽しい。


「きょ、今日の計算の問題は終わりです」


「はーい」


よし、授業終わったテリアの所に遊びに行こーかな。


俺はドアを開けテリアのいる部屋に向かう。


そしてテリアのいる部屋の前でノックをする。


コンコンコン


「どーぞー」


中からマリーの声がする。


「テリアー!」


「あら、ルイスちゃん。授業は終わったの?」


「うん。終わったよ」


俺はマリーと軽く話すと、テリアの眠っているベッドに向かった。


「テリア起きてる?」


「あうあー」


「テリア!いないいない…ばぁ!」


「きゃっきゃっ」


ベッドの中で小さな顔が笑顔を浮かべる。


かわいい~!

これが授業の後の癒しなんだよなあ~。


よし、テリアは補充し終わったし次は何をしよーかなー。

アリス姉ちゃんは今何してるんだろ?

アリス姉ちゃんのところに行こっと。


「母さん、アリス姉ちゃんどこにいるの?」


「アリスは、お父さんと剣の訓練をしてるんじゃないかしら。庭に行けばいるはずよ」


「わかった!」


剣の訓練か。

初めて見るから楽しみだな!

早く庭に向かおう!


「気をつけるのよー」


「うん!」


俺は部屋を出て走って庭に向かった。


「はぁ!やぁ!」


庭からはアリスの声が聞こえる。


「父さん、アリス姉ちゃん!」


俺は庭に出て、剣の訓練をしているハリーとアリスに声をかける


「おう、ルイスじゃないか!ルイスも剣の訓練をしに来たのか?」


「したい!」


「そうだよな。さすがに5歳じゃまだはや…ん?」


「したい!」


「ほんとにしたいのか?」


「うん!」


剣の訓練!剣の訓練!

楽しみだなー!


「振る時は周りに人がいないのを確認すること。安全第一でな。わかったか?」


「はい!」


俺はハリーから木でできた小さめの剣を渡される。

それでも俺にとっては大きく感じる。


重っ!

これをあんなブンブン振ってる父さんすごいな。


本で勉強はしたが、実際に剣を握るのは初めてだ。

しかし、妙に手に馴染む。


「ルイス!素振りはこうやってやるのよ!見てて!はぁ!」


アリスが自信満々で剣を振る。


綺麗なフォーム、鋭い剣筋、さすが父さんが教えただけあるな。


俺だって!


俺は剣を構え呼吸を整える。

本で見た通りに再現をする。


右足を前に出す。

そして強く踏み込む。

剣を上げ、縦に真っ直ぐ素早く振り下ろす。


「やぁ!」


シュッ


「なっ!?」


俺の剣は鋭く美しい剣筋で風を切った。

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