第5話 初戦闘
気がついた時にはすでに眼前に槍が迫ってきていた。
高速で迫ってくるそれに俺は必死に剣を合わせ、槍は俺の剣の腹を滑るように俺の真横を通り過ぎ――ると思ったら、元の斧刃に刀が引っかかり、俺を連れて槍は後方にあるビルに激突した。
「――いっ……痛ったいなー……」
俺は自分の上に乗っている瓦礫をどかして、壁の穴の前に立った。
どうやらビルの8階にまで飛ばされたようだ。
下を見るとこちらを見ている斧使いがいた。
そしてその手には先ほど投げたはずの槍を持っており、再び俺目掛けて投擲してきた。
槍はまた俺目掛けて突き進んでくる。
しかし、それは一度見た攻撃だ……二度も同じミスをするようなヘマはしない。
さっきのでその槍のおおよその強度は理解した……次は斬れる。
そう結論付け、俺は壁の穴から外に飛び出した。
「こいよ、この槍野郎!」
俺は意気込んで自分を鼓舞した。
飛んできた俺に槍は軌道を修正して正確に俺の腹を貫こうとしてきた……しかし、衝突する瞬間、槍の先端と刀の端がぶつかり合い…………刀が槍の柄にまで食い込み、そしてそのまま叩き切った。
拮抗していた時間は僅か数秒にも満たなかったが、俺はそれに全神経を集中させていた。
そのため、これまでに無いほど気分がハイになっており。
「はっ!次はそんなちんけな槍じゃなくてゲイボルクやグングニルでも持ってくるんだな」
「次はお前の番だぞ、斧使い!」
俺は槍を斬った勢いそのままに、下にいる斧使いに切り掛かった。
それに対して斧使いは自慢の斧を無くしたからか、腰から抜いた短剣を二刀持ち突っ込んでくる。
俺が振り下ろした刃は皮膚の表面をいくらか削った、だがそれだけだった。
斧使いはで空を切る刃の横を通り抜け、すれ違いざまに俺は肩を斬っていった。
だが、短刀だったおかげか、傷はそこまで深くなく、俺は仕返しとばかりに振り向き様の水平斬りを送る。
しかし、斧使いはそんな俺の行動も予想していたのか、地面に倒れ込みながら腹を蹴り飛ばしてきた。
「――ぐっ――」
鳩尾に入ったのか一瞬息が出来なくなり、俺は膝をついた。
「…………まだ子供だな、太刀筋が単純で分かりやすい……」
斧使いは優雅に片膝をついた俺に歩み寄ってきた。
「…………すまんな、殺すのは気が進まんが……これも命令なんだ」
男は申し訳なさそうに俺に謝ってくる。
「……おい、謝るんじゃねぇよ……勝者の謝罪は敗者への冒涜だぞ……それにこっちだって死ぬの覚悟で魔法学校に入ってるんだよ、子供扱いするな」
「……そう言ってくれるなら俺も助かる」
男は俺の首にナイフを向けてきた。
「苦しく無いように殺す……それが俺にできる精一杯だ……」
そう言って男はナイフを俺の首に切りつけた。
――――コッ――ポツ――ポツ――――ポツ――――
血が滴り落ち、地面に血溜まりができる。
そしてその池には刃が胸に刺さる――黒服が写っていた。
「――グォッ――――どういう……ことだ……なんだ、これ……は……?」
男は自分の腕ごと胸を貫いている黒刀を睨みつけている。
その黒刀は俺の腹から生えている。
先に結論から言うと、ギュメイの刀だ。
俺は自分の中にいるギュメイの刀だけを召喚したのだ……召喚と言っても正確には俺の中から合図に合わせてギュメイに刀を出してもらっていただけだ。
だが、そんなことをわざわざ教えてやるつもりはない。
「はっ、どこに手品のトリックを見せるマジシャンがどこにいるんだよ」
俺はそう言うと男の首を切り落とした。
俺は今初めて人を殺した。
魔法学校に入った時から人を殺す覚悟はしてきたが、やはりいいものではない。
だが、俺は自分の目的のために今後も多くの人を殺していくこととなるだろう。
――この感触は忘れられないな
そう思った時だった。
「お〜〜い、おにぃーー」
俺を呼ぶ声が聞こえた。
振り返ると赤狼の上に乗ってこちらに寄ってくる瑠璃の姿が見えた。
「お兄、遅いよ、待ちくたびれたよ」
そう言って瑠璃は俺の横に降りてきた。
見ると瑠璃も赤狼も傷跡はなく、どうやら今の戦いに苦戦した様子がない。
「そっちはどうだった?」
「へっへっへ、こっちはイージーゲームだったよ、苦戦してたのはお兄だけだよ」
「――こっちは二人いたけど、なんか弱かったよ……なんかお兄と戦ってた人が隊長だったみたいで、その人が一番強いって言ってた」
「――ごめんね、お兄に一番面倒なやつ押し付けて」
「兄を舐めるな、こんぐらい余裕だわ」
「……でももうこの話はやめよう」
俺は少し強がった後、話題を変えた。
「この後どうする、瑠璃」
「う〜〜ん、どこか安全を確保できる場所に行きたいけど」
「じゃあ目指すべき場所は……ひとまず学校かな」
「学校には多くの先生が常駐してるし、あそこなら保護して貰えるはずだ」
「了解!じゃあ、おにぃ、こっちきて――」
瑠璃が何やら手招きをしてこっちへ来るよう促してくる。
俺は瑠璃の真意をよく掴めないまま瑠璃に歩み寄った。
すると、瑠璃はすぐさま俺の後ろに回り込んで背中と膝裏に手を回し、そのまま俺を持ち上げた――所謂お姫様抱っこというものだ。
「……いや瑠璃まて、俺は赤狼に乗るからいらな――――」
俺の抗議を最後まで聞くことなく、瑠璃は勢いよく飛んだ。
魔法による強化された身体能力に加え、足裏に濃密に魔力を練ったのだろう、人一人持っているというのに、一飛びで100メートルを裕に超えるジャンプを行う瑠璃。
ジャンプした跡には大きなクレーターが出来上がっているのが見えた。
瑠璃は連続でその超長距離ジャンプを行い、たった3分で学校のすぐ近くまで来た。
いつもなら30分ほどかけて歩いていた距離なのだが……やはりこの妹末恐ろしい。
しかし、その後すぐに俺はそんなバカなことを考えていられなくなった。
俺らの学校は要塞へと姿を変えており、そんな要塞を攻め落とそうとする特科軍100名ほどが要塞内のおそらく20に満たない魔術師達と大砲や爆撃、氷の棘やゴーレムが入り混じる激しい戦闘その場でを繰り広げていたのだから。
サモナー、終末世界に抵抗する ケルケル @Levyfive55
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。サモナー、終末世界に抵抗するの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます