カノン

プロローグ

 金色に輝く雲の上。私は神と対面していた。

 「......この世界への、未練はないかい?」

目の前の神々しい者に、私はこくりと頷いた。

「そうか、ならば行くがいい!我の化身として、かの地の悪を打つため。囚われし者を開放するため。天界への扉を開くのだ!!!」

 その言葉を聞くと、自身の体が沼地にでも囚われているかのような感覚が襲う。

 ”落ちているのだ。” ゆっくりと、ゆっくりと。

 今いた場所がどんどん遠のいていく。

 次第に、指先やつま先、体の隅の方から徐々に、感覚が失われていくのを感じる。

 あぁ、転生が始まっているのか。

 そんなことを考えていると、先ほどまでいた場所から聞こえた

 「行ってらっしゃい。」

 なぜだか安心した。そして、聞いているかもわからない神に最後の返答をした。

 「行ってきます。」その言葉を最後に、私の意識は完全に途切れた。

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カノン @sorairo_canon

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