クルスの部屋
「此処はアイツの部屋か。」
魔王城に入ったイスネは早速一階を見て回っていた。
巨大な厨房に、応接室、そして、多種多様な部屋があり、見て回るだけで気疲れしそうになるレベルだった。
状態保存の魔法が掛かっている為、優に千年を超えているのにまるでさっきまで誰か過ごしていた様になっていた。
埃一つない廊下や窓は使用人の必要を疑う程である。
本当なら千年以上魔力を補充せずに作動し続ける魔法なんてないが、この城は膨大に溜まっている
勿論、外敵を拒む罠も作動し続けているが、魔王城に登録されているイスネには一切作動しない為、罠を機にする事なく歩く事ができていた。
そんな風に見て回っていたイスネは一階最後の部屋として厳つい扉の前にいた。
その独特なセンスを感じる扉に心当たりがあるイスネはその部屋の主の姿を思い浮かべて苦笑していた。
「相変わらずの筋肉馬鹿な部屋だな。」
その部屋は筋トレ器具や武具に溢れていた。
その無造作に物が置いてある様で、その実、この部屋で筋トレを完遂する為に筋トレの邪魔にならない様に配置になっている。
そんな筋トレ馬鹿の親友の顔が自然と出てきていた。
汗臭いという理由でイスネのペットに嫌煙されて傷ついていた親友は面白かったなと部屋を見ながら思い出に浸っていた。
「うん?これは・・・・・・手紙か?」
親友らしくもない物が一切使っていないだろう執務机に置かれていた。
そこには自分宛の手紙が置かれていた。
親友イスネへ
これを読んでいるという事は俺はもうあの勇者らに封印されて何百年、いや、何千年になっているか?
のんびり屋なお前な事だ。外界を一切寄せ付けないあの地でペット共とスローライフを送っているんだろう。
「流石、クルスだな。よくわかってらっしゃる。」
まぁ、何だ。こんな手紙を残すなんて俺らしくないと思っているぜ。決戦前に病気に罹ったんじゃないかって部下どもに心配されたぜ。
ガッハッハって豪快に笑っているクルスの笑い声が今にも聞こえそうな手紙にイスネは懐かしさを感じていた。
別に封印を解いてくれなんて言わねぇよ。そんな必要もないしな。
それよりこれは警告だ。
この場所に来たという事はお前も多少なりとも外界と関わるというわけだ。
だから、これだけは言っておく。
お前達のペットの事をちゃんと管理しておけ。
自由を重んじているお前の飼育方法を辞めろとは言わないが、少なくても何をしているかはちゃんと管理していろ。
アイツら、お前の知らない所でお前の為に馬鹿なことしているぞ。
俺達には関係ないが、面倒ごとが嫌いなお前を思ってのことだ。
・・・それと魔王城を守ってくれ。お前にはあまり思い入れがないと思うが、一応、お前も建設に関わったんだ。少しは思うところはあるだろう。
俺達、8人別々で全員仲良し!なんて集団じゃないが、それでも歪で奇妙な利害関係だけじゃない絆があり、その象徴がこの城だ。
だから、俺たちが帰ってくる場所を残してくれ。
親友からの頼みだ。
元気でな!また!酒でも飲んで馬鹿騒ぎしようぜ!!!
「・・・本当にアイツは好き勝手に言いやがって。まぁ、これから俺達が住む場所だからな。しょうがないから。守ってやるよ。早く帰ってこないとこの部屋に隠してある秘蔵の酒を全部飲んでしまうぞ。」
そりゃねぇぜ!という怒声が聞こえてくる気がしたが、気のせいだとクルスの部屋を後にした。
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