第3話
「その槍貸してくれ」
広場に着いた時、近衛兵から槍を取った。
この手の魔物退治は慣れているとはいえ、完全に殺すには心臓と頭両方破壊しないといけないから、オオカミ2匹相手に手ぶらは少し厳しい。
槍は小回りが利かないが、魔物退治でその柄の長さを活かした戦闘方式、私は好きだ。この大きさの魔物なら、剣で接近戦するより距離を取りながら槍で一方的な攻撃する方がいい。
槍を構えて撃つ体勢を取っているうちに、近衛兵を押し倒した魔物は私の頭上を跳び越えて、階段から祭壇に上がろうとしている。
「そんなことはさせない!」
手に取ったばっかりの槍を魔物の目辺りに向かって全力に投げる。魔物は槍のことを気づいたが、走る慣性のせいでもう躱すことができない。
槍はそのまま魔物の右目に刺した。
頭部に入っていない柄の長さからみると、魔物の脳みその部分に届いたと思う。
急所が突然攻撃され、魔物はうめき声をしながら苦しそうに階段からドンドンドンっと落ちて来る。
トドメを刺す絶好の機会だ。
私はもう一人の近衛兵から槍を奪い、階段に駆け上がって、魔物が足掻く時不規則に振りまわる足を避けながら接近する。
魔物が立ち直って、再び暴れる前に心臓の位置に槍を数回刺す。槍が魔物の体に入り、また抜き出されることを繰り返しをしたら、私の顔に魔物の返り血を浴びまくった。
頭と心臓が破壊され、1匹目の魔物は死んだ。
仲間が殺されたことを目の当たりにしたせいか、もう1匹は遠吠えをし、牙を剥きながら真っすぐに私へ向かって来る。
この魔物はさっきのやつより速い。あっという間に私に接近し、槍の優勢が劣勢に転じる距離まで詰められた。
身を守るのため、一旦下がってもう一回距離を取ってから攻撃するのは普通だが、私敢えて下がらない。槍を握る位置を槍頭側に移動し、片手でマントを外した。
魔物の俊敏に方向を変えながらの突進に合わせて、マントをそいつの頭に被せた。
何の役にも立たないと思ってすまないと、心の中でマントに謝った。
魔物の目線が遮られた間、私はすきを見て突進から躱して、横から魔物の心臓の位置に槍を刺す。手元の感触は悪くない、心臓に直撃したに違いない。
その確認を取ってから、私はすぐに槍を抜いて、1匹目と同様に目のところに刺し、脳みそをかき混ぜるように槍を魔物の頭の中を撹乱した。
2匹目もその場で高い鳴き声をしながら、最後の足搔きをして、動かなくなった。
『レームリッシュ』
魔物2匹とも仕留めたが、まだ安心できない。
もう一度能力を発動し、念のため隠れている魔物がないかを確認した。
怪しい生き物はもうここら辺にいない。民の大半も広場から離れて、安全の場所まで退避したようだ。
大きく息を吐き、私は能力解除して姫様のところに戻ろうとしたその時、細長い矢のようなものが凄まじい速度で祭壇へ飛ん行くことを見かけた。
全力疾走して祭壇に上がっただとしても、その矢は確実に私が何か守る行動を取る前に誰かに当たる。
不安と焦りばっかり募っていく中、手がふっと腰につけているもう一本の武器にあたった。
いつもの習慣で剣の隣につけているダガーがある。
これなら打開できるかも。
ダガーを取り出し、本来の使い方ではないが、一か八か投げて見よう。
矢の飛行速度、自分の投擲力と距離を考慮して、矢の飛行軌道上の当たり予測点に向かってダガーを投げた。
こういうことは弓が得意彼女からの教えだ。まさかこんなところで役に立つとは思ってもいなかった。
「当たってくれ!!!」
当たってほしいという願いが強すぎて思わず声を出した。
私はダガーと矢の進行状況に注意を払いながら、全力で階段を駆け上がって、祭壇の上まで戻った。
「バーン!」
ダガーが祭壇手前のところで矢に当たり、矢の飛行軌道を祭壇後方に変えた。矢がすこし飛んだあと、そのまま地面に落ちた。
状況解決とひと安心する暇もなく、空気を切り裂く「ひょーーう」の音が耳に入り、もう一本の矢が飛んできたことに気付いた。
矢の向かう先は…姫様。
「クソ!」
それがわかった瞬間、私は反射的に彼女の元へ一直線に走った。
彼女を押し倒せば矢の攻撃を避けられるが、そうすると隣に立っている王妃様に矢が当たってしまう。
自分の体で庇うしかない。
姫様の肩を掴み、腕の中に引き寄せながら立つ方向を変える。全身で彼女を庇うような体勢を取った途端、矢が私の腕を貫通した。
この速度とこの威力、弓ではなく、弩からの矢だ。
一回目と二回目矢の出所が同じ、そして広場回りに祭壇を狙えるほど高い建物は数か所しかない。これらの条件を合わせて考えれば犯人の居場所を推測できる。暗殺者の位置バレは致命的だから、同じ方向からの三本目は多分もう飛んでこない。
これでいったん安心できそう。私の腕の怪我程度でことを済んで本当よかった。
「姫様、ご無事でしたか?」
原因究明はさておき、私は腕の中の人が無事かどうかを確かめようと、問いを掛ける。
「私は大丈夫。ジュンこそ、腕が…」
「急所ではないので、これくらい大したことありません。数日すれば治ります」
「でも…」
「本当に大丈夫です。どうかご心配…な…」
突然、心臓が強く締め付けられるような感じがした。
その感じが痛みに変わってすぐ全身に蔓延し、激痛が体のあらゆるところに走る。あまりの痛みで意識がどんどん遠くなっていく。
「ジュン!!ジュン!!…」
意識が消える前聞こえたのは、姫様不安の声だった。
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