会社の先輩の顔が好みだ。

だからつい目で追ってしまう。

でも本気で恋をしたら仕事に手を付けられなくなりそうなので気持ちに一線を引いている。この線を越えたらダメだよ、って自分に言い聞かせている。

そんな状態のまま数年後、先輩は退職した。

先輩が職場からいなくなり仕事に集中できるが、先輩から連絡来るんじゃないかってスマートフォンを気にするようになった。

連絡来ないかな、なんてドキドキワクワクして待って、やっと来た連絡は結婚報告だった。

皮を剥いたみかんをばくりと食べる。

先輩はよく柑橘系の香水をしていた。

みかん、オレンジ、グレープフルーツ、ブンタン……、食べるたびに飲むたびにこうやって思い出しそうだ。そして何もしなかった自分を悔いるだろう。

二人でバーに行って、奢ってもらった甘いお酒の味をもう一度味わいたい。

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