第21話 砂糖男


数分後……


「そろそろかな?」

「こんなもんだろ?」


 あらかた狩りつくして、倒した屑妖から核を取り出していく二人。

 この核を取っておかないと、これに水をかけると復活してしまうのだ。

 ついでに言うとこれが狩った証拠にもなるので奉行所に提出しないと倒したことにはならない。

 

「そろそろ帰るよー」

「わかったわー」


 康隆が真尼にそう伝えた時だった。


 ぱらぱら……


 何やら砂のようなものが上から落ちてきた。


「なんだこれ?」


 康隆が不思議そうに砂を見てみると、何やら白い砂のようなものが自分の鎧に付いていた。

 何となく見覚えがあったので軽く舐めてみる。


「甘いな……砂糖?」

「何でこんなもんが上から降ってくるんだ?」


 不思議そうにする康隆と蒙波が上を見ると……


「あいつ何やってんだ?」


 変な男が寺の屋根から壺に入っている砂糖を撒いている。

 

「変な奴……でもみたことあるな……」

「そうか?」


 意外な発言が気になる蒙波。。


「あれはたしか……」


 そう言って思い出そうとする康隆だが……


バタン!


 


「おい大丈夫か?」


 蒙波が慌てて康隆に駆け寄ると……


「ぐごごごご……」

「何寝てるんだよ……」


 何故かいびきをかいて寝ていた。


「こんなところで寝てたら屑妖に食い殺されてしまうぞ?」


 そう言って康隆を起こそうとして……あることに気づいた。


「まさかあの男……鵺系か!」


 ようやく正体に気づいて凍り付く蒙波!

 慌てて康隆を担いで逃げようとする蒙波だが……


「しまっ……た……」


 急激な眠気に襲われてばたりと倒れこんでしまう。

 一方、それを見ていた真尼の方も様子がおかしいことに気が付いた。


「月婆? ひょっとしてこれって……」

「……あの屋根の上の男は妖怪ですな。何かの術を二人に掛けたようですじゃ」


 そう言って懐から面を取り出す月婆とを見て、真尼は慌てて懐から符を取り出す。


「眼照亜!」


ぼわぁぁん!


 符から美女蜘蛛が現れて、真尼はそれに乗る。

 

「ぬぅぅぅぅん理晶力ぅぅぅ!! お色直し!」


 ばしぃぃん!!


 きわどいハイレグ水着にフワフワの装飾を施した戦闘服に変身する月婆。

 月婆はその脚力で、真尼は眼照亜の糸で一足飛びに寺の屋根に上る!


 スタタ!


 屋根の上で砂糖男を挟む形で対峙する。


「塩壺……いや、砂糖壺ですな。姫様。あの壺からまかれるものにご注意を」

「わかってるわ」


 真尼は式神の眼照亜を前に出して距離を取る。

 砂糖男はぼやっとした顔をしているが、油断なく二人の様子を見ている。

 

「月婆!」

「おいさぁ!」


 月婆は持っていた金棒で砂糖男を殴りつけようとするのだが……


ガギィン!


 持っていた壺であっけなく弾かれる!


「月婆!」

「どうやら見た目通りの硬さではないようじゃの……」


 冷静に敵の様子を観察する月婆。

 一方、真尼も黙ってはいない。


「眼照亜! やりなさい!」


 しゅぉぉぉぉぉぉ……


 眼照亜の前に風の刃が生まれて砂糖男に飛んでいく!

 だが……


ばさぁ!


 砂糖男が持っていた壺から砂糖を撒くと一瞬で風の刃が消える!


「……手ごわい……」


 敵の意外な強さに手をこまねく二人。

 一方、下の方では……


「大丈夫か!」

「……覚醒発願!」


 パキィン!


 慎之介と千穂が駆けつけてくれたのか、二人にかかった眠りの法術を解除してくれる。

 

「今そっちに行く!」


 そう言って上に上がろうとする慎之介だが、その様子を見て月婆は叫んだ!


「ダメじゃ! あっちを見ろ!」

「あっち? どわぁ!」


 慎之介は月婆に言われた方向を見て驚いた!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る