第15話 湯女?

「じゃあ、お願いします」

「わかりました~♪(セクシー声)」


 そう言って湯気の向こうの女性が近づいてきて……


「よろしくお願いしま~す♪(セクシー声)」

「おい待てや糞ババアァァァ!!」


 現れた湯女を見てガチギレする康隆。


 


 この婆さんは右手に剣山、左手におろし金を持っており、肩から大きなこんにゃく玉を二つぶら下げて胸のあたりに入れていた。

 先ほど

 月婆は小首をかしげて不思議そうに尋ねる。


「お客様どうしました?(セクシー声)」

「とりあえずその声は止めろや! 腹が立つんだよ!」

「注文の多い客じゃのう……」


 にやにや笑いの月婆に額に、青筋立てながら康隆は言った。


「大体そのこんにゃく玉は一体何なんだよ!?」

「ふっ……こんなこともあろうかと! あらかじめ買っておいたのさ!」

「確認させてくれ。どんな状況を想定してた?」


 あきれ顔になる康隆に謎の巨大こんにゃく玉をぷるぷると震えさせて、にやりと笑う月婆。


「ま、貴様らのようなチェリーボーイにはわしの悩殺ぼでーは刺激が強すぎたかのぅ……」

「黙れ干物ババア!」

「あと。ひとまとめにするんじゃない。俺は普通に経験している」


 おちょくってくる月婆に怒る康隆と、チェリーボーイ扱いに怒る蒙波だが、飄々と剣山とおろし金をカンカンと鳴らす月婆。

 

「それでどちらでやるんじゃ? おすすめはおろし金で皮膚を削ってから剣山で肉を削るのが一番じゃぞ?」

「ただの拷問じゃねーか!」


 そう言って月婆を殴ろうとする康隆だが……


 ひょいっ♪


 あっさりと避ける月婆。


「どうしたチェリーボーイ? わしの脳殺ぼでーに見とれて殴れんのか?」

「このやろう!」


 そう言って殴りかかる康隆だが……


 ひょいひょいひょひょーい♪


 彼の拳はまったくかすりもしない。

 月婆の余裕のあるにやけ顔に更に怒る康隆。


「こんの糞ババア!」

「ひょひょひょひょひょ♪」


 そう言って蹴りや頭突きも加えて連打するのだが、全然かすりもしない。

 そして……


「ほれ♪」


 べちん!


「ぐげっ!」


 月婆が肩からぶら下げていたこんにゃく玉を康隆の顔にたたきつける!

 あっさりとクリーンヒットを食らい、たたらを踏む康隆。


「このやろう!」


 そう言って殴ろうとする康隆だが……


「なっ! どこだっ!」


 いつの間にか月婆が居なくなっていた!

 慌てて探す康隆に蒙波が叫んだ!


「タカ! 後ろだ!」

「なにっ!」


 慌てて振り向こうとした康隆だが、月婆はにやりと笑った。


「悩殺! せくすぃだいなまいとくらっしゅ♡」


 ずにゅり!


 月婆のカンチョーが康隆のア〇ルに刺さる!

 ちなみに生でぶっ刺しているので腸にまで指が入り込んでいる!

 常人なら絶対やらないようなカンチョーをして月婆は叫んだ!


「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 列! 在! 前!」

「ごぐげがしゃが!」


 !!

 康隆の奥歯がガタガタと震えまくる!


「破!」

「ぐげぇ!」


 月婆の気合の入った叫びと同時に悶絶して倒れてしまう康隆。

 

 ぴくぴくぴくぴく……


 痙攣して倒れる康隆を尻目に颯爽と立つ月婆。


「またつまらぬものを刺してしまった……」

「嫌ならやるなよ……」


 指先の匂いをくんくん嗅ぐ月婆とあきれ顔でぼやく蒙波。


「と言うか、何で急に現れたんだよ?」

「うむ。湯女の存在に気づいた姫様が見に行って欲しいと頼まれたんじゃ。このゴキブリが手を出さんようにな」

「しっかりしてんなー」


 康隆の行動が、がっつり読まれていたことに呆れる蒙波。


「流石にこれだけやっておけば手を出さんじゃろう……さらばじゃ!」


 そう言って蒸し風呂から出る月婆。

 倒れこんでいる康隆を見て蒙波はあきれる。


「これどうすんだよ?」


 とりあえず蒸し風呂から出そうと康隆を担ぐ蒙波だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る