第7話 鵺系妖怪
「ところで今日は何をやるの?」
不思議そうに尋ねる真尼に康隆が答える。
「
「ふーん……鵺系妖怪って何?」
ずる……
それを聞いて少しだけ蒙波がよろけてしまう。
「あんた本当に姫様なんだな。そういうことも知らないのか?」
「仕方が無かろう。姫様はずっと箱入り娘じゃったんだから」
月婆が代わりに弁護する。
「姫様。鵺系妖怪とは、来る途中でも屑妖を数匹見かけましたでしょう?」
「ああ、あのなんか寒天みたいな屑湯みたいなクラゲみたいな妖怪のこと?」
「左様でございます」
少しずつ分かりやすく説明する月婆。
ちなみに屑妖とはスライムみたいなモンスターだ。
「あの妖怪は色んなものを食べて大きくなる妖怪でございますが、あの妖怪が二つ以上の物を食べた時にそれが融合してしまい、二つ以上の『何か』を合わせたようなおぞましい生き物が生まれてしまうのです」
「二つ以上の何か?」
月婆の言い方に怪訝そうな顔になる真尼。
「はい。屑妖が食べる物は生き物とは限りませぬ。石や土やら皿やら刀やら、そう言ったものを含めて『食べる妖怪』でございますゆえ、色んなものが合体して
「なるほど」
月婆の説明に真尼は納得する。
「しかしながら、屑妖は分裂して増える妖怪でございます。鵺系妖怪もまた分裂して増えますゆえにきわめて厄介な妖怪なのです」
一匹いたら百匹居る厄介な妖怪のタイプでもある。
真尼が嫌そうな顔をする。
「めんどくさい妖怪なのね」
「まあ、アイツみたいに人の役に立つタイプもいるんだけどね」
そう言って下の方の木の洞を指さす康隆。
洞の中では他の傾奇者が戦っていた!
「はぁぁぁぁぁ!!」
くねくねくねくね……
気合を入れて何故か踊り始める傾奇者が居るのだが……彼が踊り始めると次々と光が飛び出して妖怪へと殺到する!
そしてその光が妖怪に当たると……
ボボボン!
小さな爆発が起きる。
これが波流術で踊ることで空中の『理力網』の秘孔を突いているのだ。
一緒に戦っている竜人の少女も気合を入れて薙刀を振るう。
「はぁぁぁぁ!!」
ガギン!
薙刀の刃が妖怪に当たるのだが、妖怪は鉄でできているので効かない。
だが、少女は薙刀に力を籠めると、薙刀が光りだした。
「鋭刃!」
少女が叫ぶと同時に薙刀が鉄でできている妖怪の身体を斬り始める!
そして……
ザシュ!
鉄でできた爺さんを斬ることに成功する。
これが気功術で理力をこういった力に変えることが出来る。
それはともかくとして、斬った鉄の爺さんはそのまま倒れてしまうのだが、傾奇者は切り分けて袋に入れて背負子に結び始める。
「あれも鵺系妖怪だからな。勝手に分裂するってことは鉄が増えるってことだから、ああやって取った鉄はこの江戸の町の鉄資源になってるんだよ」
「上手くできてるのねぇ」
得意げに話す康隆と感心する真尼。
「それで、私たちが倒す
「そこの洞に入ったとこ」
そう言って康隆が指さしたのは少し上にある洞で、もう目と鼻の先だった。
筆で荒々しく赤字で書かれた『辰の五番』が洞の隣に書いてある。
「あそこから入ったらもう妖怪の巣窟だから準備しないと」
そう言って康隆は
「準備は良い?」
「大丈夫よ」
「問題ない」
「あいたたた! 婆の腰が急に痛く……」
「じゃあ、行こう」
「ちょっと待てい!」
何か言い出した月婆はほっといてスタスタと歩き出す康隆。
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