第31話 海と二人

 雲一つない真っ青な空。

 その下に広がる、美しいエメラルドグリーンの海。

 ラナさんとわたしは、そんな綺麗な場所にやってきていた。


「わー! うーみだぁーっ!」


 花が咲いたような笑顔で、海辺へと走っていくラナさん。

 真っ白のオフショルダービキニを着ていて、清楚で可愛らしい。

 ちなみにわたしが着ているのは、黒色のワンピースタイプの水着だ。ビキニとか胸が貧相なのがすぐバレるので手が出せません。


「待ってくださいよー、ラナさん!」


「えへへっ、シャロンちゃん、えーい!」


「うひゃあーっ! つめてぇっ!」


 ラナさんに水を掛けられ、思わず飛び跳ねるわたし。

 わたしの反応が面白かったのか、ラナさんの水攻撃が激しさを増す。


「ほーら、どんどん掛けちゃうぞー!」


「冷たい冷たいですよっ! くっわたしが反撃しないと思っていますかだとしたら大間違いです! くらえーっ!」


「きゃっ! やったなー、負けないぞー!」


 わたしたちは暫くの間、そうやってじゃれあっていた――


 *・*・


「それにしても、あったかいねえ。シャロンちゃん」


「そうですね……南の方まで来た甲斐がありました」


 ラナさんとわたしは砂浜に座りながら、そうやって話していた。

 穏やかな海風が時折吹いて、わたしたちの髪を揺らす。


「……何だか、夢を見てるみたい」


 ラナさんの呟きに、わたしはそっと首を傾げる。


「夢、ですか?」


「うん。シャロンちゃんと出会ってから、楽しいことばっかりで……何だか、幸せな夢を見てるみたいだなあって。本当に現実なのかな? って、たまに考えちゃうんだー」


 彼女の横顔が浮かべる表情は、とても優しくて。

 でも微かに、不安そうにも見えた。


 だからわたしは立ち上がって、彼女の目の前で屈む。


「…………? どうしたの、シャロンちゃん?」


 不思議そうな面持ちの彼女の頬に、右手で触れて。

 少しだけ、柔い肌を掴む。

 わたしは、微笑った。


「どうですか? ほんのちょっとだけ、痛くないですか?」


「え……? うん、まあ、ほんのちょっとだけ、だけれど」


「そうでしょう? だからこれは、夢ではないんですよ?」


 ラナさんの澄んだ青色の目が、丸くなる。

 わたしは彼女の頬から、手を離した。


 彼女の浮かべる表情は、もう少しも不安そうではなくて。

 確かな安堵が、そこには滲んでいる。


 ……気付けばわたしは、いつかのように、彼女に抱きしめられていた。

 どきりと心臓が跳ねて、驚きの声を漏らそうとしたわたしに。



「…………ありがとう、シャロンちゃん」



 ラナさんはそうやって、ささやいた。


 やっぱりわたしはこういうとき、どんな言葉を返すのが正解なのかわからない。

 だから、いつものように、心から零れた言葉を伝えようと思う。



「…………こちらこそ、いつもありがたやです! ラナさん」



 海の香りと、ラナさんの香りが混ざり合う。


 ――また、優しい海風が吹いた。



――【最果絶海が香るペスカトーレ】編 fin.


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 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます……! 作者の汐海です。


 応募しているコンテストの文字数上限が60,000字ということで、こちらの第四編で一旦更新を区切ろうと思っております!

 ただ、この先に書きたいエピソードも幾つかあるので、いつかその辺りも形にしたいなあと思ったり。


 この作品を通して、主人公シャロンを筆頭とした個性豊かなキャラクターたちを描けて、作者としてもとっても嬉しかったです。

 そして、物語に最後までお付き合いくださった読者の皆さんには、感謝してもしきれません……!(ありがたやです!)


 そういえば応募しているコンテストは読者選考ありということで、よければ最後に作品フォロー、星やレビューなどで応援してくださると、すごく励みになります!

 コメント欄でのご感想もお待ちしております〜! ぜひぜひお気軽に教えてくださいませ!


 ではでは、またどこかでお会いできることを祈りつつ。

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S級パーティーを追放された美少女料理人を、SSS級冒険者のわたしが引き取ります〜最高の戦闘力と最高の調理技術で最高のご飯ライフ! え、返してほしい? 今更この子の魅力に気付いたってもう遅いですよ♡〜 汐海有真(白木犀) @tea_olive

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