第21話 VS上位種ニーフィルンデ

 モンスターには大抵、「普通種」と「上位種」がいる。


 例えば、星屑ノ竜ティリラーシィ(普通種)と星屑災竜ティリジアーズ(上位種)とか。ちなみに、上位種に固有の名称があるのはレアだったりする。


 普通種と上位種は似た性質を持つけれど、上位種の方が全然強い。そして、普通種の持つ弱点を克服していることが多い。


 なので、いくら魔法での英傑と呼ばれるわたしと言えど、上位種と戦うのに乗り気にはならない。あ、その上位種が激ウマなら幾らでも戦います戦わせてください。


 *・*・


 わたしは目の前に佇む青色の花を模す怪物ニーフィルンデを見つめながら、少しだけ溜め息をついた。


(ティリューゼルが見つかったと思ったら、上位種と遭遇かあ……タイミングわるう……何より美味しくないしなあ、花を模す怪物ニーフィルンデ……)


 わたしの態度が気に障ったのか、花を模す怪物ニーフィルンデの殺気が増す。こわいこわい。


「……まあわたしも暇じゃないんで、さっさと倒してあげるよ?」


 そう口にして、わたしはたんと地面を蹴った。


(花を模す怪物ニーフィルンデの上位種は確か、嫌らしいことに水属性の魔法も反射するはず……だとしたら、昨日みたいに無属性攻めかな? 無属性反射は聞いたことないし)


 普通種の花を模す怪物ニーフィルンデよりもだいぶエグめの蔦攻撃を右に避け、跳ね、左に避け、防御魔法で弾き……そうしながら、わたしは脳内で戦略を練る。


 花を模す怪物ニーフィルンデの濃い青色の花弁が、視界で一気に大きさを増していく。


 わたしは双眸を細めて、高度破壊魔法〈無属性〉を唱えた。


 今朝の修行でも成果が出ていたし、かなり効くはずだ。


 ……と、思っていたのだけれど。


(あれっ……嘘!?)


 花を模す怪物ニーフィルンデが負ったのは、かすり傷程度。柔らかそうな花弁でさえ、少し抉れた程度だ。


 わたしの動揺の隙を突こうと思ったのか、花を模す怪物ニーフィルンデの蔦攻撃がより激しさを増す。かわしきるのは難しそうだったので、球状に防御魔法を展開。余裕ができたときに考えろ自分……!


(無属性魔法が効きにくいということは、そもそも攻撃魔法自体に耐性があるタイプか……だとすると厄介だな。ちゃんと覚えてないけどどうせ抜け穴みたいな属性弱点もないだろうし、何より反射されるやつ当てちゃうとしんどいし……なら、の出番だな)


 わたしはとんと後方に跳んで、花を模す怪物ニーフィルンデと少し距離を取った。


 花を模す怪物ニーフィルンデが飛ばしてくる毒液攻撃を避けながら、わたしは武器召喚魔法を起動する。


 ぱし、とわたしの手に握られたのは、銀色の刃を持つロングソード。

 刃は花畑の色を薄く反射し、色彩豊かに鈍く輝いた。


 わたしは強く地面を蹴って、加速する。


 花を模す怪物ニーフィルンデの蔦が迫る。わたしはそれを、持っている剣で切り刻んでいく。一閃、もう一閃。金色の血液が撒き散らされて、綺麗な花々が汚れていく。


 わたしは笑いながら、たんと跳躍した。


「ごめんね……わたしが得意なのは、魔法だけじゃないんだよ?」


 舞うようにして蔦を刻みながら、わたしは目の前のモンスターへと笑いかける。


 そうしてわたしは、花を模す怪物ニーフィルンデの濃い青色をした花の頭を、首からざくりと切り落とした――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る