第12話 死にたい私はたぶん死なない
死にたい。私はちょっとしたことでそう思う。誰かに少しでも迷惑をかけたと感じたとき、「あの時ああいえばよかった」と後悔したとき、どうしようもないことに嘆いたとき、何が待っているかわからない未来を不安に思うとき。私の頭には「死にたい」が溢れる。
でも、数えきれないくらい「死にたい」と思った割に、まだ生きている。どうしてだろう。最近、自分が矛盾していることに気づいた。
思い返せば、中学生くらいからだった。「死にたい私」が現れたのは。小学生までは、運動以外はそれなりにこなせて、自分に自信があった。悪く言えば周りが見えていなかった。しかし中学生になり、少し大人になった私の視野は広がった。そしたらどうだろう。今までぱんぱんに膨れていた自信はいとも簡単にしゅわしゅわと萎んだ。それからは自分の負の面を情けなく感じ、どうなるか、先が見えないことに不安がるようになった。次には逃げることを考えた。全てから逃げられる場所。私が思いつく精一杯は「死」だった。見つければそこから、自然と「死にたい」を頭の中で連呼するようになった。
もはや、「死にたい」は癖になっていた。もちろん、一回一回の「死にたい」は本気のつもりだ。それでも実行しようとしないのは、「死にたい」と思うことで同時に安心してしまうからだ。逃げることのできる場所があるとわかることで気持ちが落ち着いてしまう。
だからきっと、「死にたい」と思う私はどうしようもない原因以外に死ぬことはない。逆に、「死にたい」と思わなくなった私が死に向かって着実に歩いてゆくんだろう。
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