ACT 4

 A・M 1:30。


 レディは目を伏せるとぽつりぽつりと歩き出した。


「夢袋はあたしを『ケンタウロス』と呼んだわ。いつか人間は、人間の上半身と馬の下半身を持ったあたしを、その二つをくっつけた生き物と見なくなるだろうか? あたしを見たら『ケンタウロス』という人馬に見るかしら」


 レディは言葉を切った。大きくため息をつくと再び口を開いた。


「いっそ、『ケンタウロス』という新種として認知して。そのほうが楽だわ」


 レディは立ち止まり、彼女を見下ろすようにそびえたつビル群を見上げた。


「あんたたちを造るように、私は創られたのよ。ふふふ、増設ビルのようにね」


 レディは眉をひそめ、諦めと同義語の悲しみを浮かべて笑うと再び歩き出した。


「自然は優しいのよ。造り物の真似をしてくれるの。巨大な都市は『ジャングル』のようだ。ビルディングは『そびえたつ大木たいぼく』のようだ。現存するものの何かが、その奇妙さすら真似をしてくれる。私を『ケンタウロス』って呼んでくれる夢袋のようにね」


 レディはぴたりと立ち留まり、かすかに見えるひしゃげた十字架のような空と、空を切り裂いたビルを見あげた。


「慣れるわ。『ケンタウロス』という生き物として、慣れてしまう日が必ず来るわ」



*********


お読みいただきありがとうございました。


お時間がありましたら、同時掲載の「異世界ファンタジー」の方にも、お立ち寄りいただけると嬉しいです。


よろしくお願いします。



https://kakuyomu.jp/works/16818093074747194806


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