第21話 お宝ゲットだぜ!

イバヤ遺跡に潜んでいたレア度Dの”オーガナイト”に苦戦していた俺達。

俺はセリカやミレイユさんを守り抜きたい想いが高まった時に俺の中で何かが目覚めたような感覚を得て、その力で”オーガナイト”を倒した。

少しだけその喜びに浸った後に奥の方へと進んでいる。

“オーガナイト”を倒したからこれ以上の脅威はないと思い、知らずに奥の方へ走っていたのもあってか、深部へ行ってみる事にしたのだ。


「【ソードオブハート】……?」


俺は自身のステータスプレートをセリカやミレイユさんと見ていた。


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名前:トーマ・クサナギ

性別:男

種族:ヒューマン(異世界人)

属性:無

年齢:30

職業: 何でも屋

レベル:19

冒険者ランク:E


スキル:

〈ベーススキル〉

【腕力強化】

腕力を上げる。

【脚力強化】

脚力を上げてスピードとキック力を上げる。

〈ジョブスキル〉

【簡易鑑定】

レア度D以下のモンスターやアイテムの名前や特徴を一目で判別する。

【剣戟LV.1】New!

強力な剣技を放てる。

〈ユニークスキル〉

【ソードオブハート】New!

本人のメンタルに比例して身体能力とスキルを一時的に上昇させる。


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【ソードオブハート】と言うスキルが追加されていた。

以前話し合ったギルドマスターであるカルヴァリオさんから、異世界からやって来たものは例外なくユニークスキルが発現する記録があると聞かされていた。

意外なタイミングかつ想像以上に早く俺はユニークスキルを得るに至ったのだ。

嬉しく思う反面、なぜ習得できたんだろうとも疑問に思った。

俺は”オーガナイト”を倒す前後の気持ちを交えてセリカとミレイユさんに共有した。


「スキルの説明を見た限りの考えですが、トーマさんの気持ちや想い次第で一時的なパワーアップができるって事ですかね」

「”オーガナイト”の想像以上のパワーと頑強さと執念深さを前に恐怖を覚えながらも、私達を守りたい想いが強まって、要所で【腕力強化】や【脚力強化】を使って凄いパワーやスピードやジャンプ力を発揮して倒せたと考えるのが、今の段階ではしっくりきますね。後、【剣戟LV.1】のスキルを習得できたのもその恩恵かと……」

「そうか……」

「一種の【支援魔法】や【付与魔法】みたいですね」


ミレイユさんが【ソードオブハート】がどんなものなのかをかみ砕いて説明してくれた。

魔術師なだけにスキル関連の知識はかなりあって、おまけに俺やセリカにも飲み込みやすい形で教えてくれるのは助かる。

セリカの言う通り、ベーススキルはともかく、ジョブスキルは職業別で習得できるスキルのタイプは千差万別であり、鍛錬やモンスター討伐でレベルを高めたりしていくのが常識だ。

ユニークスキルを会得する人が世界を見渡しても中々出会えないとの事だが、色んな冒険者を見てきたセリカでさえ初耳とは、それほどまでに独特なんだなと思った。


「何にせよ、このお陰で二人を守る事ができたから、今はそれで良しとしよう!」

「それもそうですね!」

「あっ、あれは……」

「「ん…?」」


ミレイユさんが大きな部屋らしき場所を見つけ、俺とセリカはそれを見やる。

俺達は慎重さを抱きながら進み入っていった。


「いいか?入るぞ。」

「「ハイッ!」」


確認し合うように、俺はセリカとミレイユさんそれぞれに眼を合わせ、扉を開けた。


そこにあったのは財宝や宝箱の山————————

…なんかではなく、


「意外と何にもない感じですかね……」

「でも、モンスターが潜んでいるわけでもないですね」

「……」


まあまあの広さの部屋だったが、財宝や宝箱の類は見当たらない。

遺跡の奥にお宝ザックザックとRPGの定番みたいな展開を期待したけど、流石にそこまで甘くはなかったみたい。

セリカも【気配探知LV.1】を使い、モンスターも部屋の中や周辺にいないと確認できたため、襲ってくる心配はないだけでも安心はできた。

ただ、せっかく来たので少し調査してみる事にした。

調査系のクエストなので、何か情報になるモノを持って帰らなければクエスト達成とはならないからね。


「何でしょうかね?古代文字って奴?」

「その可能性もゼロではないので、記録は残しておきましょう。」

「うん。」


俺達は部屋の中を回りながら、手にしている魔道具である『マジックレコーダー』を使って記録していく。

機械染みたカメラのような見た目に両手で収まる程度の大きさをしており、角のスイッチを押せばレンズを通して絵として保存できるモノだ。

この世界でも、俺がいた世界に当たり前のようにある家電とか意外にちらほら見かけるんだよね。


「ん……?」

「どうしましたか?」

「何かこの石床だけ、少しへこんでいるような気がするんだ」


歩いて回った俺だが、脚裏に何かくぼみのような床を踏んだ感触がして、セリカが反応した。

ミレイユさんも俺の方に視線を送っている。

俺は慎重に触ってみると、指で引っ掛けられる突起がある事に気づき、軽く持ち上げる。


ゴゴゴゴゴゴゴッ!


「?!」

「な、何なの?」

「皆さん、あれを!」


急に部屋がガタガタと振動が始まり、地震かと一瞬思った。

するとミレイユさんが示すように指をさした。


「何だろう、あの狭そうな部屋?」

「真ん中に何かある」


そこには畳4枚程度の狭いスペースがあり、丸い石テーブルの真ん中に木箱があった。

俺達はその入り口に集まった。


「いいか、取るぞ」

「取ったらすぐに戻って下さいね」

「リラックス、リラックスですよ」


一歩踏み入れて手を伸ばせば届く距離だが、何が起きるか分からない。

深呼吸し、余計な力を抜いて数秒後、俺は動く。


シュッ!


一歩で入り、両手で一瞬にして箱を抱え、さっきいた入口に戻った。

それから俺達は周囲を見張り、罠か何かないかを警戒する事また数秒。


「何もないね……」

「みたいですね」

「でも、開ける時も要注意ですよ」

「分かってる」


二人が固唾を飲んで見守っている中で、俺は慎重に箱を開けた。





「これは?」


入っていたのは、海のように透き通った紺碧色の魔石だった。

ゴブリンやスライムなどのモンスターを倒したら魔石がドロップされるのは定番だが、大きさはソフトボールくらいで宝石が飾られた指輪にもよくあるカットのされ方だ。


「随分と大きくて、神々しさを感じる魔石だね」

「モンスターから出る類の魔石とはまた違いますね」

「それにしても綺麗です」


俺達は美しくも重厚感のある魔石を見て感動を覚えつつあった。


「ねえ、もしかしてだけどさ……」

「ハイ?!」

「宝箱からアイテムを見つけちゃったわけだから……」

「確かにそうですね」

「「「せーの……」」」


俺は爆発しそうな興奮を感じ、セリカやミレイユさんは察したように表情が綻び…。


「「「お宝ゲットだぜ!!」」」


…と思い切って万歳したのだった。

こうして俺達はイバヤ遺跡を抜け出し、帰路に着いた。

ギルドに戻って成果報告はもちろんだが、俺達にはもう一つやるべき事がある。


「ミレイユさん、今後何か予定とかあったりします?」

「予定ですか?」

「これから俺達【トラストフォース】は今回のクエストの完了報告をしにいくんだ。」

「そうですか…。私はこれと言ってもう……」


俺はミレイユさんに予定の有無や今後の事について簡単に質問してみた。

その時の彼女の表情はバツが悪いと言うよりも、これからどうしようみたいな感じだった。

元パーティーの人達に囮役を無理矢理押し付けられた挙句に逃げられたのだから、実質追放って扱いだろう。

この事については俺もセリカも凄く怒っている。

一時的だが、一緒にダンジョンに入り、Dランク冒険者でも倒すのが簡単ではない““オーガナイト””を一緒に倒した仲になった身だから、このまま彼女を放置できないのが本音だ。


「もしも、ミレイユさんが良ければなんですけど……」


俺はある話を持ち掛ける。


「はい、是非やらせて欲しいです!」

「では決まりですね。」

「きっとまだギルドにいるはずですよ!」


俺達は意を決して、少し早足でギルドに戻っていった。


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