第1話 異世界人ファーストコンタクト
俺は3体のモンスターと戦っている女性の下に駆け付けた。
考えなしで突っ込んでしまった事を若干後悔しながら、さっきのステータスに【簡易鑑定】と【腕力強化】があった事を思い出す。
あれは何のモンスターだと頭に念じると情報が流れてくる感覚になった。
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名前:ゴブリンポーン
種族:ゴブリン
レア度:F
スキル:
―
【概要】
ゴブリンの中でも最も数は多いが身体能力は最も弱い部類に当たる。
知能や学習能力は低い傾向であり駆け出し冒険者のレベリングや
戦闘経験を積むのに丁度いいモンスターである。
但し、集団で攻められると厄介であるため注意が必要。
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名前:ゴブリンソルジャー
種族:ゴブリン
レア度:E
スキル:
―
【概要】
ゴブリンポーンの上位種。
ゴブリンポーンよりも身体能力が高く知能もヒューマンの10歳程度である。
個体数の多いゴブリンポーンを束ねる役割を担っており、倒せば指揮系統が崩れる。
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ゴブリンか、ゲームでもよく出て来るモンスターだっけな。
ゲームスタート時には倒しまくってレベルを上げてキャラの強さの土台作りに役立てたな。
って感心してる場合じゃないな、何とか助けないと。
すると”ゴブリンポーン”の一体が俺の存在に気付いたようで、突っ込んで来た。
「ゴォォォッ!」
「あなた何してるの?逃げなさい!」
「え、えっと…」
(何とか、【腕力強化】!)
女性の方は俺に気付いて叫んだが、”ゴブリンポーン”は棍棒を振り上げ突進する。
俺はベタな言い方で声を張り上げる。
これでいいのかな…と思った瞬間に身体の底から何かが漲るのを感じた。
そして”ゴブリンポーン”の棍棒による打ち下ろしをバックステップで躱した。
紙一重で回避できた事に安堵する暇を持つ間もないまま…
「オラッ!」
「ガァァァ!」
”ゴブリンポーン”の顔面を思い切り殴り、その身体は森の木に向かって激しく吹き飛び激突した。
するとそのモンスターは動かなくなり、光の粒子となって消えた。
モンスターを倒すとそうなるのか?
それを見ていた”ゴブリンソルジャー”は驚いたような表情をして、もう一体の”ゴブリンポーン”は固まっていた。
すると…
「【風魔法LV.1】、『ウインドスライサー』‼」
「グォォォォ!」
女性の声が響き、一つの真空の刃が飛ばされ、”ゴブリンソルジャー”の背中をザックリ切り裂き、その身体は地面に落ちた。
するとその身体は光の粒子になって消えていった。
「ゴッ…グォッ」
遺された”ゴブリンポーン”はリーダー格の存在だった”ゴブリンソルジャー”がやられたのを見て怯えて逃げようとするが…
「遅い!」
「ギャァ!」
女性が背後に回り剣で胸を貫いた事で絶命したのか、もう一体の方も光の粒子となって消えた。
彼女を襲うモンスターはこれで全滅したみたいだし、いいのかな?
そう思って女性の下に歩み寄ると…
「あ、あの…」
「はい?」
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「えぇ、大丈夫です…」
「さっき”ゴブリンポーン”を素手で殴り飛ばしたのは凄いですけど、その際に手を怪我されたとかは…」
「本当に大丈夫です、痛みも傷もないのですが…」
彼女が俺の下に走って距離を詰めてきた。
見知らぬ男性を巻き込んでしまった申し訳なさやどこか痛めてないかの気遣い、そして俺のさっきの行動についてどうなっているかを知りたいような様子が顔に出ていた。
俺は顔も至近距離まで近づけそうになる彼女に…
「ちょっと距離が近いです…」
「あ、つい、すいません…」
俺はなるべく優しく窘めると、彼女もつい近寄り過ぎた恥ずかしさを覚えたからか、スーッと冷静になった。
それから彼女は気持ちを切り替えるように俺と向き合った。
「さっきは助けてくれてありがとうございます」
「私は冒険者をやっている、セリカ…セリカ・ブレンフィアです!」
セリカとなる女性は自己紹介をしながら礼儀正しくお辞儀をした。
今は身体中に砂が少しついているものの、腰と肩の中間まで伸ばした銀髪をハーフアップにした髪型に翡翠色をした眼が特徴的で美形ながらも活動的な印象である。
服装も革の鎧と金属の胸当てを付けており、両腕にはシンプルな手甲とその下に指の根元から上腕二頭筋まで覆うアームカバーも着用し、ホットパンツに動きやすそうな茶色いショートブーツと軽装だ。
後、目鼻立ちも整っていて脚も結構長いからスタイルも良く、もし俺がいた現実世界でオシャレして街に出たら何人かの異性が振り向くかもしれないくらいの美人だ。
そう考えていると…
「ん?冒険者って、文字通り冒険する人の事かな?」
「そうですよって、お言葉ですけど冒険者を知らない感じですか?」
「え、まあ、その実は…何から話せばいいかな?」
俺が質問すると、セリカはまるで知ってて当然のリアクションをして返してくる。
そりゃ異世界転生した事に驚いた矢先にモンスターと戦闘しているセリカを見て俺が助けに入ってと修羅場みたいな場面に遭遇した後だからなぁ。
自分が何者であるかを話そうにも言葉が見つかりにくいったらありゃしない。
「取り敢えず私の家で少しお話しましょう、何か訳アリそうですし、お礼もしたいので」
「うん、ありがとう…え、君の家?」
「他にどこがあると思ってるんですか?あの街から少し離れたところに私が拠点にしている家があるんですよ!」
セリカが指差す方には街があってその離れに居住しているのは分かった。
「さぁ、行きましょう!」
案内しようとしている彼女をよそに、ただ俺はふと思った。
(俺、女の子の家に行った事ないんですけどーーーー!)
実を言うと29年間生きてきた中で趣味友達の女性部下はいても、彼女ができたことは一度もない。
そして異世界に転生してすぐに美人な冒険者と出会ってその家まで招待されてしまった。
一体、どうなっちゃうんだろ?
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