第35話 フリマ

ねぇ、今週フリマやってるから行ってみない?と友人に誘われて行ってみた。


日本にいるときから、フリマをのぞくのは好きだった。ところ変われば、品も変わるだろう、ということで、二つ返事でフリマに行くことにした。


例の大駐車場の半分をつぶして、フリマの会場になっている。お店は50くらいで、いわゆる一般の人が家庭の不用品を売っているようなお店や、プロだと思われる人が売っているお店、新品の商品を売っているお店もあれば、完全にアンティークを売っている店までいろいろだ。


せっかくだから全部見てみよう、ということで、はじから回ってみることになった。


最初に友人が足を止めてじっくり見始めたのが、ロシア人のお店。ばっちりとメークをして、真っ赤なハイヒールを履いて、ヒョウ柄のミニスカートをはいている様は、バブルのころのお姉さんたちをほうふつとさせる格好だ。


友人が真剣に見始めたのは、なんと、ピアスだった。それも、明らかにメッキの安物のピアス。ヒョウ柄のお姉さんが言う。そのピアス、5ユーロでいいよ。2つ買ったら6ユーロ。3つだったら10ユーロね。


あれ、計算おかしくないですか?これは、12ユーロで4つ、というのを狙っているのか。


友人がすかさず、え、高い。4つで10ユーロにしてよ、というと、お姉さん、3つだったら10ユーロでいいけど、4つは12ユーロ。どうしてもっていうなら11ユーロでいいよ。


というより、全部で20ペアくらいしかないピアスの中から4つも選べるとは到底思えない。私は一つだっていらない。


すると友人、わかった。じゃあほかの店に行くからいい、とさっさと歩き始めた。


すると、ヒョウ柄のお姉さんが叫んだ。オーケーオーケー。10ユーロで4つだ。もってけドロボー、ならぬ、あんたラッキーだね、と。


友人はすたすた戻ってくると、じゃあこれ4つね、とはじから4つを手に取り、10ユーロ札をお姉さんに渡して、そそくさと立ち去って行った。


ねえ、あんながらくたピアスどうするの。あなたの趣味じゃないでしょ?


と聞くと、プレゼントにするという。インドに持って帰って、ヨーロッパ製だからと言ってプレゼントするのだそうだ。


その調子でガンガンとお店を回り、どんどんと値切って大量に買い込んでいく様子は圧巻だった。私は結局、Villeroy & Bochというルクセンブルグ発の陶器メーカーの豆皿2枚を買っただけ。しかも値切り方がわからず、友人に値切ってもらった。


後で聞いたら彼女はフリマ好きで心得があるそうだ。現金を小銭でポケットに入れておく。うまく値切れそうもなかったら現金を見せて、これしかない、と言い張る。値切れなかったら、立ち去るふりをして、様子を見る。


そんな駆け引き、できそうもないわ。ということで、これ以降も何度かフリマに行ったけど、いまだに戦利品はその時の豆皿2枚だけだ。

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