第34話 フランス語
用事もないのに街をうろついたり、駐車もままならないのに車で外出して、スピード違反のチケット切られたり。そして、使えもしない高いバッグを衝動買いしてみたり。
いったいこの人は何をしているの?ハチャメチャな毎日を楽しんでいるだけなんじゃないの?と思う方も多いのではないだろうか。
はい。なんだかんだ言って、実は仕事をしているんです。
時差の関係で、朝から晩まで、電話で会議。この机にかじりついていることがほとんど、と思うような毎日だ。
こちらに来てから、上司は変わるわ、組織変更は1-2か月のスパンで行われるわ、目まぐるしく環境が変わっていくのだ。以前はそんなことなかったのに。よく考えたら、私がルクセンブルグに来るきっかけとなった上司が、私がこちらに来てから数か月とたたないうちに退職したのが事の発端だ。
とはいえ、私はこちらの生活がなかなか気に入っているので、こちらにいたいと思ったら、それこそ机にかじりついてでも仕事を続けないといけないのだ。
はぁ。日本にいるときは、国外退去、なんて他人事だった。日本人なのだから、いくらでも日本に住んでいる権限を持っている。
しかしこちらではそうもいかない。日本のパスポートを持っていれば、ビザなしで入国できて、90日間はいられるが、それ以降はビザを持っていないと国に滞在できないのだ。まぁ、90日間立ったら、一番近いEU以外の国、例えばスイスとかイギリスに行って帰ってくればまた90日間いられるのだけれど。
しかし、日本にいるときは、英語が喋れるというだけで大きなメリットだったけど、こちらに着たら、たった2か国語しか話せない、普通以下の人だ。何せ、一番ベーシックで一番使われているのがフランス語で、私は全然、基礎もできないのだ。そしてルクセンブルグに住んでいる人が話せる言語の平均は、3.6か国語だそうだ。
こんなことならば、高校でフランス語を選択すべきだった。
ドイツ語は基礎を勉強して、話していることは理解できるけど、自分が話すとなると話は別だ。大体、ドイツ語自体話している人がほとんどいないので役に立たない。
少なくとも会社での公用語は英語で助かった。しかし、入居するときに大家さんに送ったラブレターの中で、私はフランス語も勉強する予定です!と元気よく書いたのに、まだボンジュールしか覚えてない。
フランス人の友達が言っていた。私たちフランス人が英語を勉強するのはとても難しいの。だってフランス語と語順が逆なんだもん。フランス語では赤い車のことを、車赤い、という語順でいうのに、英語では赤い車でしょう?
はぁそうなんだ。でも私は昭和生まれなので、日本語の中に混ざっているなんちゃってフランス語はわかるということに気づいた。赤はルージュ、パンツはパンタロン。おお、これで少し語彙が増えるかも。
なーんて、甘くはないのでした。まだまだ道のりは長そうです。
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