第32話 スピード違反

夏、車でハイウェイを走るのはなんと気持ちがいいことか。夜10時くらいまで明るい中、どこまでも続く緑の田園地帯を永遠と走る。気持ちいいなぁ。


だがしかし。そこには落とし穴があるのだ。そう、ハイウェイでも時速制限がある。一般道でも、ここからXX町です、という町の名前の看板の上には、必ず50KM と書いた時速制限が掲げてあるのだ。


調子に乗って走っていると、このスピード制限を忘れる。街中は30KM 区間もあるほどだ。


そして、こちらではご丁寧に、この先カメラがありますよと書いた看板が立っている。どうも、それを書かずに撮影するのは法律違反のようだ。


そう、私は運転はうまい方ではないくせに、スピードを出すのは好きなのだ。そして、こういった看板やカメラのサインを見落とすのは日常茶飯事なのだ。


シャンパーニュからの帰り道、いやぁやっぱり本場はよかったなどと友人とおしゃべりしながらついうっかりスピードを出しすぎていたようだ。ほんのり暗くなりかけた街中でぴかっとフラッシュが光った。


あれ?今フラッシュだった?なんだろう。


と私がのんきにいうと、友人は、あれね、今スピード違反でカメラで撮られたよ。あーあ。だからスピード出すなってさっき言ったのに。


フラッシュが光った瞬間、スピードは確か60KMを超えていたような。そうすると10KMオーバー?


もう、最悪!なんであんなところにカメラがあるのさ、などと文句を言っていると友人が一言。


あのさ、ここフランスだよね。フランスの警察ってさ、カメラで撮っているくせに、スピード違反のチケットを送ってきたり、送ってこなかったりするらしいよ。ラッキーだったらきっとスピード違反のチケットなんか、送ってこないって。心配することないない。


日本の常識から言ったら、ありえない。時々送ってきたり、送ってこなかったりするなんて。そんなのおかしいよね。まぁ、こっちとしてはラッキーだけれども。


そして、そんなことをすっかり忘れたころに、その手紙は来たのだった。


フランスで速度違反をしましたので、罰金を振り込んでください。80ユーロ。不満がある場合は訴えることもできます。


なんと。しかし、証拠写真まで同封されているのに、訴えられるわけがない。かなり痛い出費だけれど、仕方がない。すぐに銀行に振り込んだ。


そして私は本当に懲りない人なのだ。ドイツでもカメラで撮られて、罰金を科されてしまった。1か月の間にフランス、ドイツに罰金を払った私は、それ以降、一度もスピード違反をしていない。高いレッスン料のおかげだ。

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