第29話 エマイシェン マーケット
ルクセンブルグでは、毎年、イースターの日曜日の後の月曜日に、年に一度のエマイシェンマーケットなるものが開かれるということを、友人に教えてもらった。
イースターは数少ない友達が全員、家族と過ごすために国に帰ったり、旅行に言ったりで、今年は一人で過ごすということが確実だった。
そこで、このマーケット、1年に一度しか開かれないという言葉につられて、行ってみようと決めたのだった。
そこで、どんなマーケットなのか事前に情報収集をしようと思い、まずは大家さんに聞いてみた。大家さんはフランス人だが、ルクセンブルグには20年以上住んでいるということで、文化にも精通しているのだった。
ああ、あのマーケットに行くなら、絶対に朝早くいかなきゃだめよ。ペックフィルフェンを買うといいよ。めちゃくちゃ混むから。いろんなお店が出てて面白いけど、とにかく早く言って早く帰る。すりに気を付けてね。そうそう、ルクセンブルグのフォークダンスとかも見られるらしいよ。私は言ったことないけどね。
うーん、あてになりそうな、ならなそうな曖昧な情報だけど、今年初めての私は、行くべきだろう。ところでペックフィルフェンって何?
陶器でできた鳥の置物で、笛になっているの。それに、毎年いろんなアーティストが、この日のために1年かけてデザインして作ったものが売られているから、限定品が買えるかもよ。
限定品、と聞いたら、ゲットしなければならない。
ということで、朝10時くらいに出かけることにした。この日ももちろん雨だった。
街に着いたとたん、いつもと違う熱気が立ち込めていた。
そう、アメ横かと思うほどの人手なのだ。こりゃ、フォークダンスやペックフィルフェンどころではない。自分のバッグを抱えるのが精いっぱいだ。
ペックフィルフェンの屋台がずらりと並んでいる。確かにお店によって全然違う。手作り風のものもあれば、大量生産っぽいものもあったりで、見ているだけでも楽しい。
私は自分用に一つ、友人へのお土産としていくつか買い込んだ。
人の波に押されて歩いていると、美術館の前の広場に出た。ちょうどフォークダンスが始まったところだ。
フォークダンスは、男女が一緒に踊るもので、メロディーはドイツのものによく似ている。服装もやはり、ドイツに似ていた。男性は半ズボンにサスペンダーが付いた革製のもので、シャツは白いシャツを着ている。女性は大きなエプロンをドレスに着けて、ドレスはたっぷりとした長いギャザースカートだ。
踊っている人たち、楽器を演奏している人たちはみんな、定年後の人達らしい。趣味でやっているそうだ。
せっかくのマーケット、雨だったけど、限定品もゲットできたし、良い一日になった。来年は晴れるといいけど。
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