第25話 ワインフェスティバル

11月も半ばごろ。友人から、ワインフェスティバル、行ってみない?と誘われた。


もちろん!ということで、連れ立って行ってみることに。


ルクセンブルグのシティセンターから歩いて5分ほどのところに、グラシスという名前の大きな駐車場兼イベント会場がある。普段は駐車場なのだが、ある時はイベント会場、フリマ会場、ある時は巨大な遊園地にと季節によっていろいろな催し物をする場所でもある。


そのワインフェスティバルも、グラシスにテントを立ててその中で開催されるという。なんだか想像がつかないが、ものは試し。


会場には20ユーロ支払って入場すると、テントの中にはルクセンブルグのワイナリーのブースがずらり。好みのものを入れてもらう。要は、飲み放題なのだった。


ルクセンブルグはドイツとの国境にモーゼル川のほとりがワインの産地で、生産量が少ないために国外にはほとんど出回っていない、という希少価値が高いものなのだ。また、クレマントというスパークリングワインも生産している。


限定品、希少価値が高いものにとても弱い私は、片っ端からテイスティングしたい!と思ったものの、そんなに飲めるわけもない。それに、飲み放題だ、とは言え、一応、もっともらしい顔で、一通りのうんちくを聞いてからでないと飲ませてもらえない。まぁ、向こうは売るのが目的なのだから、当たり前と言えば当たり前だ。


面白いのは、売るのが目的のはずなのに、なぜかその場では購入できないことだ。購入したい人はWebサイトか、実際にワイナリーまで来てね、という設定になっている。あとからわざわざ行く人がどれくらいいるのだろう。この場で売ったほうが、絶対もうかるのに。


そこで友人が一言。ねぇ、なんか食べないと酔いが回っちゃうよ。


確かにおっしゃる通り。そこで売店に行ってみると、ハムとチーズの盛り合わせやピクルス、オリーブなんかも売っている。おつまみ盛り合わせを頼み、先ほど入れてもらったワインで乾杯する。女二人で立ち飲みだ。私たちの周りもそんな人たちであふれていた。


いやぁ、こんなテントじゃなくてさ。やっぱり、ワイナリーに夏に行って、飲み比べすべきじゃないの。これじゃあ感じが出ないよね。


おっしゃる通り。今日は情報収集あるのみだ。そこで、パンフレットをもらい、順位付けをして、いい気分で家に帰ることになった。


そしてそのパンフレットはと言えば、いまだに本棚の片隅に眠ったまま、一度も開いていない。やはり、ワインはその場で購入できるべきなのだ。


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