第20話 IKEAの組み立て

午後になって、IKEAがやってきた。


ったく、遅いよ、と言いたいのを我慢して、早速お願いしますね、と大人の対応。私、えらいじゃないか。


IKEAは自分で組み立てるか、組み立ててもらうかを選ぶことができる。私は友人が言うまま、半分は組み立ててもらい、簡単なものは自分で組み立てるというコースをお願いしていたが、朝から来る予定を立てていたため、友人に手伝ってもらえないことが確定していた。


ねぇこういう時ってどうしたらいいの。私家具なんて組み立てたことないし。ましてや一人でなんてとんでもないわ。


すると彼女が、ははぁそれはやはりヨーロッパ方式で行こう、と、したり顔で言う。


ヨーロッパ方式??


どうも、こちらでは会社を通さず現金で交渉する、ということが普通のようだ。


あなた、現金いくら持ってるの、と友人に聞かれ財布を確認すると、200ユーロ(32000円くらい)ほどあった。


それだけあれば十分。彼らが来たら、私、女一人でこんな大きな家具組み立てられないわ。200ユーロ現金で払うから、全部組み立ててくれない?ついでにゴミも全部回収してくれない?と言えばいいのよ。必ずと言っていいほどOKっていうと思うよ。


えー、そんな交渉したことないし。私はそういうの大の苦手だ。ちなみに値切るのも大の苦手だ。東南アジアのマーケットとかで、値切ろうとして鼻で笑われるような実力なのだ...


しかし、背に腹は代えられない。実際、家具の組み立てなんて興味ないし、やる気ないし、なんでもいい、だれでもいいから家具を組み立ててくれればそれでいいんだ。


わかったよ。交渉すればいいんでしょう。やってみるよ。


IKEA のお兄さんは二人できた。先ほど友人から、どちらがボスか見極めること、と言われていた。ボスに交渉しないと意味ないからだ。それに、なんか言って渋られたら、静かにクレームしろ、とも言われていた。


あら、あなたたち、遅れてきたのって契約違反でしょう。IKEAに訴えたら契約打ち切られるんじゃないの、あなたたち下請けでしょう。といった感じで強気にでろ、というのだ。


ますます自信がなくなった。でもやるしかない。


ボスと思われるほうに、恐る恐る、先ほど教えられたセリフを言ってみた。200ユーロしか持ってないけど、これ全部払うから全部家具組み立てて箱だって処分してもらえないかしら。


えーっと、いいけど今日終わんないかもよ。明日でもいい?


想像してなかった展開だが、それで合意し、進めることに。明日、確実に来てくれますように。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る