第17話 はたまた仮免練習だ

以前、日曜日の朝に街中を運転して練習した、というお話はご紹介した通り。その後も私は少しずつ腕を上げていた、と自分では思っていた。


だがしかし。ルクセンブルグでは運転よりも駐車のほうがずっと難しいのだ。おかげで、車で行くのは、駐車場が巨大であるところに限っていた。駐車場が狭いところは避けて、比較的駐車がしやすいところに行くようにしていた。


一般のマンションや一軒家でも駐車が難しいことには変わりない。私の仮住まいは地下一階が駐車場で、そこまでのアプローチがらせんになっているため、入庫するのも大変、出庫するときはもっと大変なつくりになっていた。


そして、私の新しい住まい、そう、70年近くたった一軒家でも、私の駐車場は確保されていた。しかし、なんとそれは地下なのだった。


ルクセンブルグの一軒家は、地下一階に駐車場があることが多い。古い家ならばなおさらだ。家によって異なるけど、当然のことながら地下に駐車場がある場合、地上に出るまでは坂になっている。


大家さんからは、あなた、車は必ずオートマで、そして必ずバックで入れること。そうじゃないと、事故起こす可能性が高くなるから要注意ね、と釘を刺されていた。


うん、オートマというのは言われなくてもわかっている。オートマ以外運転する気はないからここは大丈夫。えっと、バックで入れるっていうのは??


駐車場の前に立ってみてわかった。おーそういうこと?バックでかなり急な坂を下って駐車場に入れなきゃいけないのだ。それってかなり怖いのでは?駐車場の中は広いけど、枠がとても狭いような...


ただでさえ一度事故を起こしている私は、駐車場の出し入れの練習をいつするか、ずいぶんと迷った。それに、この坂は冬、凍結してたら登れないんじゃないかと思えるような急坂。そう。冬の問題は冬考えよう。それよりも問題は駐車できるかどうかだ。


前回日曜日に練習して懲りた私は、土曜日の朝早くに練習することに決めた。早速チャレンジ。


かくん、と歩道に乗るまではよかったが、その後、車をバックで入れ始めたら、坂が急なためぐんぐん駐車場に吸い込まれるように降りて行ってしまう。必死にブレーキを踏みながら調整するが、自分の体も後ろに引っ張られるし、視界は斜めになっていくし、びくびくしながらやっと入庫できた。


よし、無傷ではいれたぞ!


次、出庫。アクセルをどれくらい踏めばいいんだろう。暴走しても怖いから恐る恐るアクセルを踏んだが全然動いていかない。ゆっくりと踏みながら上に向かっていくが、歩道が全然見えないことに気が付いた。


大家さんが言ってたのはこれか。


またしても、一人仮免の練習を繰り返さねば。またまた出不精になりそうな駐車場だ。

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