第7話 ルクセンブルグ、1日目

何度考えても飛行機乗り過ごしは失態だった。でも、無事についたんだからよしとするか。


同僚が空港まで来てくれていた。花束をもって。彼女は私が飛行機を乗り過ごし、到着時間が変わったので、なんと一度家に帰って、また来てくれたのだった。せっかくお花買ったのに、しおれちゃったよ、とは言いつつ、無事についてよかったと喜んでくれた。


さて、彼女は私に花束を渡すとじゃあ来週オフィスでね、とさっさと行ってしまった。あれ、送ってくれるんじゃないのかしら??


そうだ。私はヨーロッパに来たのだった。一人ひとり、個人が自立している国々。当然のことながら、空港から仮のマンションへも、自分で行くべきなんだ。そしてもし送ってほしいのであれば、意思表示を明確にしなければならない。荷物も多いし送ってくれない?と。


これが逆で誰かが日本に赴任することになって、私が空港に出迎えに行くとしたら、間違いなく送っていくだろう。送って、と言われなくても。


しかしここは日本ではないのだ。たった15時間程度でついてしまうのに、全く別の文化なんだ。タクシーでそんなことを考えながらマンションについた。


さて、ルクセンブルグ市はとても小さくて、空港から市内のマンションまでは20分程度でついてしまう。空港まで来てくれた同僚は空港から10分程度のところに住んでいる。市内どこにいても、飛行機は頭上を通過し、飛行機の経路によっては町中にいても飛行機がかなり近くを通ることもある。


私が仮住まいとして選んだのは割と新しいマンションの1階。最新式のロックとかで、You Tubeのビデオを見て開け方を確認してください、というメールが届いていたのをすっかり忘れていた。雨の中タクシーから降ろされ、そこでYou Tubeを見る羽目に。ちゃんと準備したはずだったのになー。


ロックの仕組みを理解し、やっと室内に入ったらどっと疲れが出た。とりあえず、無事についた。なぜか少し感動して、少し涙が出た。


そうだ、両親に連絡しなきゃ。無事ついたよって言ってあげないと心配してるかも。


この部屋の元住人は、絶対インド人だ、とわかる香辛料のにおいがキッチンに充満していることを除けば、快適に整えられたマンションだった。ロックも最新式だし。




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