土御門キョージの独白

  この星に、この銀河に、この世界にオレよだれを垂らして羨むようなものなどない。全てが等しく無価値ゼロだ。だが奈落の底ならばあるいは。

 しかし、この天叢雲剣クソアマ、やる気があるのかと思うほどに信じ難く人間にかぶれている。あの蜘蛛の大神から落とし子斬島亜沙を預かってから、いや年々人間に対する甘さが練乳の入り過ぎた珈琲コーヒーのように甘く飲み込み難くなっている。人間に友好的であることは最初から分かっていたがまさかここまでとは。

 この肉体の先祖である安倍晴明が子孫の利益を考えてある仕掛けを天叢雲剣クソアマに施した。天叢雲剣が天皇の手元から離れ、所有者が居なくなったとき溜め込んだ穢れをリソースに天叢雲剣に八岐大蛇としての自我を戻すという仕掛けだ。そして平家の一党が壇ノ浦に沈んだときその仕掛けが上手く起動した。晴明の見立てでは自我を持った天叢雲剣を子孫が上手いこと調伏して戦力に転換するつもりだったのだが、そう上手くは運ばず、逆に土御門家が奴の配下のようになってしまった。

 そのせいでオレ天叢雲剣クソアマに良いように使われている。まあいい。

 オレの見立てではこの星の破綻も近い。破綻が本当に迫ればあの素戔嗚尊スクラップも動かざる負えまい。天叢雲剣クソアマ素戔嗚尊スクラップの相手をしてくれるのならばオレはどうでもいい。

 天叢雲剣クソアマはそのために活動していると理解している。お前の根幹を成す原体験をオレは知っている。よって導き出す結論は一つ。お前は何があっても素戔嗚尊スクラップと戦う道を選ぶだろう。


 

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