第15話 西倉 眞澄と図書館でイチャイチャする

 今日も講義が終わり、薫は帰るだけとなったのだが……。


(雨がすごいな……しかも急に寒くなって来た)


 本日、外は雨が激しく降りつけていて駅まで歩くのは非常に億劫だった。かと言って今バスに乗っても雨の影響で混雑していることだろう。


 薫は雨がやむまで大学で過ごすことに決めた。美緒や瑠奈が一緒に帰るなら別だが、彼女たちは今日は午前中で講義が終わってすでに帰宅している。


(図書館でも行くか)


 薫たち文系学部が主に利用する文系学部棟と図書館は隣り合わせになっており、渡り廊下で繋がっているため濡れずに移動することができる。


 薫は渡り廊下に設置されている自動販売機で暖かいココアを2つ購入すると、図書館の最上階へと向かった。


 読みたい本をいくつか確保しながら奥へ進んでいくと、案の定そこには西倉 眞澄がいた。彼女はこの時間、よく図書室を利用しているため今日もいるのではないかと薫は推測していたのだった。


「あっ、藤堂くん……!」


 薫が近づくと、眞澄は心底嬉しそうに手を振ってくる。会いに来ただけでそんな嬉しそうにされて薫も嫌な気などするわけなく、手を振り返した。


 今日は雨で湿っているからだろうか、青く染めたミディアムヘアはポニーテールにしていた。そしてお洒落な丸眼鏡は今日もかけている。


「これあげる」


 薫は眞澄の隣に座ると、先程買ってきたココアのうちひとつを彼女に手渡した。


「わっ、嬉しい……ちょうど喉乾いて暖かいもの買いに行こうと思ってたんだけど、面倒になって動けなかったから」


「それならよかった」


 眞澄はココアの缶を開け、美味しそうに口に含む。薫も喉に流し込むと冷えていた体が温まって行くのを感じた。


「藤堂くん、今日はしばらく図書館に居る?」


「うん、しばらく雨もやみそうにないからね」


「そっか……えへへ」


 薫が隣に居てくれることを知ってか、眞澄は嬉しそうにしていた。それからしばらく薫と眞澄はそれぞれに本を読みながら時間を過ごしていた。


 なんとなく、薫は本を読みながら右腕に温もりを感じていた。一冊目の本を読み終わり、ふと見ると眞澄が彼の腕に密着していることに気が付く。


「あっ、ごっ、ごめん……つい寒くて」


 そう言って眞澄が体を離すと、急激に体が冷えていくのを感じる。先程まで寒さを感じずに集中して本を読めていたのは、眞澄の体温が合ったからなのだろう。


「大丈夫……気にしないで」


 今度は薫が眞澄の体に近づいた。


「うっ、うん……」


 それからも薫と眞澄は体を寄せ合って本を読んでいたことで寒さを感じなかった。


 ただ、互いに体が触れていることを意識してしまうようになったせいで集中はできなかった。

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陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。 参戸芽 ショウジ @hitori_nomithi

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