第12話 翌朝、冷静になった宮波 美緒は見悶える

 目を覚ますと同時に、薫は違和感を感じた。


(かっ、体が動かない……)


 金縛りにでもあったのかと思いあわてて目を開くと、すぐ目の前に美緒の綺麗な顔があった。


「わっ……」


(そうだ、昨日は宮波さんを泊めて、ベッドで一緒に寝たんだ……)


 色白の綺麗な肌に、目鼻立ちの整った顔立ち。サラサラな黒髪のショートヘアは横を向いて寝ていることで頬に垂れかかっている。


 普段はぱっちりとした瞳を閉じ、すぅーっと静かな寝息を立てて眠っている。


 薫はつい美緒の美しい寝顔に見とれてしまうが、すぐにそれどころではないことに気が付く。


 腰の両側に伝わる、とろけるような柔らかい感触……美緒は両脚で薫の腰のあたりを挟み込み、さらに両腕で薫の上半身に抱き着いていた。


 しかも彼女は昨日、ズボンのサイズが合わないということでパーカーを上に羽織っているだけの格好なので、生の太ももが彼の体に触れている。


(やっ、柔らかい……じゃなくて、早く動かないと……)


 そう思い、薫はゆっくりと彼女のホールドから抜け出そうとする。しかし薫が動けば動くほど、彼女の豊満な太ももがぷるんっ、ぷるんっ――と揺れて彼の腰を刺激してくるのだ。


(うあぁ……やわらか……)


 薫は抜け出す前にその気持ちよさに溶かされてしまいそうになる。


「んぅ~?」


 しかし美緒は寝ぼけているのか、薄目を開けると間の抜けた声を出し、さらに薫に抱き着いて来た。まるで抱き枕にでもするように、薫に体を擦りつけ、頬ずりをしてくる。


「ちょっ、宮波さん……!」


 これ以上抱き着かれたら理性を保てないと感じた薫は、彼女の頬を何度か優しく叩いて呼びかける。その甲斐もあってか、美緒はようやく目を覚ましたようだった。


「ん……薫くん……?」


「あっ、あぁ……。宮波さん、おはよう……」


「おはよ……って、ごめっ~~~!!」


 と、美緒はようやく自分が薫に抱き着いていたことを意識したのか、あわてて体を離す。


「ちょっ、ごめんわたし寝ぼけてて……かっ、薫くんに、へっ、変なことしてなかった?」


「…………だっ、大丈夫……!」


 歯切れの悪い薫の反応を見てすべてを察したのか、美緒は頬をかぁ~っと赤く染めて背を向ける。同時にお尻の半分くらいまでさらけだされていた下半身を隠すように、パーカーの裾を下を引っ張った。


(やっ、やばい……わたし、いつもみたいに抱き枕を抱きしめる感覚で薫くんを……!!)


 美緒は普段寝るとき、1人で寝るのが寂しくて愛用の抱き枕を抱きしめているのだ。


 今日はつい、いつもの感覚で眠っている間に近くにいた薫を無意識的に抱きしめてしまったのだろう。


「っっ~~~!!」


 今度は美緒が見悶える番だった。彼女はかけていたタオルケットを顔のあたりに引き寄せ、声にならない声をもらす。


(っていうかよく考えたら昨日だって……夜のテンションで一緒に寝て欲しいとか言ったり、こんな太もももお尻も丸出しの格好で薫くんにくっついたり……っもう~~~!!)


 しばらくの間、美緒は見悶えたままタオルケットを手放さなかった。

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