第11話 宮波 美緒とひとつのベッドの上で寝る

 それからも薫は美緒の近い距離感と、露出の多い彼女の格好に戸惑いながらも一緒に時間を過ごした。


 夕食を食べて、一緒にゲームをしたり、それぞれのんびり自分の時間を過ごしたりして、そろそろ寝ようという事になった。


 美緒にはベッドで寝てもらい、薫は座布団を敷いて寝ることにした。これも初めは遠慮していた彼女だったが、今日はゆっくり休んで欲しいからと説得すると、それならありがたくと受け入れてくれた。


「じゃあ電気消すね。おやすみ」


「うん……おやすみ」


 薫は部屋の照明を落とし、目を閉じる。しかし座布団だからか、それとも自分の部屋に美緒がいるという状況だから中々寝付けない。


 そうこうして十分ほどたった頃だった。ふと腕を掴まれる感覚があった。


「宮波さん……?」


 なぜか美緒がベッドから降りて、薫の枕元に来ていた。


「ごめん、なんか眠れなくて……やっぱり、一緒に寝てもらえないかな?」


(えっ、えぇ……!? 部屋に泊めるだけでもなかなかハードル高かったのに、一緒に寝る!)


 薫はどうすることが正解かを考える。


 確かに美緒は今日、怖い目にあってからずっと薫にくっついていた。薫が離れると恐怖からか身体が震えているのだが、彼にくっついている間はそれがおさまるのだ。


(やっぱり、ここは宮波さんのお願いを受け入れてあげるべきだよな。でも……)


「その……俺がそばで寝てて、嫌じゃない?」


 念のためそう確認することにした。もし、やっぱり一緒に寝ることに抵抗があるということであれば、彼女の家に一回一緒に行って使い慣れている枕を持って来るとか、他の方法を考えるべきだと思ったのだ。


「その、少し緊張はするけど……薫くんと一緒に寝るのは全然嫌じゃないよ」


「そ、そっか……わかった」


 薫は覚悟を決め、美緒と一緒にベッドで寝ることを決める。


 先に美緒に入ってもらい、それから薫がベッドの上にのった。


(なんか暗くてどの辺に枕があるのかわからない……)


 すでに電気を消してしまっているため手探りで自分のスペースを探していると、ふと手の平に柔らかい感触が触れた。


「っん……」


 美緒が不意に、言葉にならない言葉をもらす。


「ごっ、ごめん……!!」


「だっ、大丈夫……! 大丈夫だから……!」


 薫はあわてて手を離し、もう枕などどうでもいいやと適当に今いる位置に体を落ち着ける。


(やっ、やばい。なんかめっちゃ手の平に柔らかい感触が当たってた……もしかして、宮波さんの太ももかお尻触っちゃった……? どっ、どうしよう……わざとじゃないとはいえいきなりこんなことしちゃって嫌われたかも……)


 そんなことを考えて気が気ではない薫は美緒に背を向けるように横になるが……彼女はそんな薫の腕を両手で掴み、顔を彼の背中に押し付けてくる。


「やっぱり近くに居てくれると落ち着く……薫くん、今日はほんとにありがとね」


 きっと疲れていたのだろう、そう言ってすぐに美緒は眠りについたようだった。


(よかった……無眠れたみたいだし、今ので嫌われてもいないみたいだ……とはいえ彼女の体に触れてしまわないように気をつけよう)


 薫も安心すると、徐々にまどろみの中へと落ちて行った。

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