陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
第1話 異変を感じて陽キャグループの美女2人が話しかけてくる
第1話 異変を感じて陽キャグループの美女2人が話しかけてくる
陽キャグループを追放された次の日の朝、薫は学部棟のロビーに1人で待機して講義が始まるのを待っていた。
ギリギリに講義室に入って、彼らとは離れた席に座ろうと考えていた。
「薫、おっはよー!」
しかし、そんな薫の両肩にポンと優しい感触が覆いかぶさる。
「七瀬さん……」
振り向くと、陽キャグループのメンバーである七瀬 瑠奈がいた。
色白な肌にぱっちりした瞳。明るい茶髪のロングヘアは肩元にかけてウェーブを描いている。
モデルのようにスタイルがよく、いつもお洒落なファッションをしている。今日はブラウンのカーディガンに紺のミニスカートという格好だった。
「もうみんな講義室行ってるよ~?」
なにも知らない瑠奈は、1人でロビーにいる薫を見て、不思議そうにそう問いかけてくる。1時限目の講義は5人とも共通の科目で、いつもなら講義が始まる前から講義室で席をとり、みんなで会話をしているからだ。
「ごめん……俺はこれからはひとりで講義を受けるよ」
「えっ、どしたの? てか昨日グループのチャットも退会してたし……なんかあった?」
(やっぱり、七瀬さんは俺がグループを追い出されたことは知らなかったんだな……)
けれど、薫は瑠奈に本当のことを話すつもりはなかった。もし話したら、快児や強太が昨日言っていたようなことを本当にするかもしれない。
(それに、七瀬さんがこのことを抗議したとしても俺がグループに戻ってまた上手くやっていくことは無理だろう。それなら、なにも知らない方が彼女も罪悪感を感じずにいられるはず)
そう考え、薫は瑠奈に背を向けて歩き出した。
「これからはひとりで過ごしたくなったんだ。七瀬さん、今まで仲良くしてくれてありがとね」
その後も瑠奈は薫の背中に声をかけるが、彼はうつむいたまま振り向くことなく歩いて行ってしまった。
◇
昼休み。
いつもはグループで食堂に集まって食べているが、薫はコンビニで弁当とお茶を購入し、学部棟で食べることにした。この大学のコンビニは食堂と同じ棟に配置されている。
「薫くん、待って!」
しかし、彼がコンビニを出て学部棟に向かおうというとき、ちょうど学食で食券を買っていた宮波 美緒に話しかけられる。
肩元で切りそろえられた黒髪のショートヘア。今日は白いシャツの上に紺のパーカーを羽織り、下はデニムのショートパンツを身に着けていた。
瑠奈が綺麗系の美人ならば、美緒は可愛い系の美人だろう。彼女は比較的ボーイッシュな格好を好む。
「薫くん、なにかあったの? もし嫌じゃなかったら、わたしに話してくれないかな」
美緒は食券を強く握りしめ、もう片方の手で薫の背中を優しくさする。美緒も今日1日薫が1人で過ごしていることを気にしていたのだろう。
「ごめん、これからは1人で過ごしたいんだ」
やはり瑠奈と同様に、美緒もあのことを知らされていなかったのだと薫は理解する。
だから、瑠奈のときと同じように彼女に危険が及ばないよう、そして罪悪感を抱かせないためにこの場を去ることにした。
「もう行くね。宮波さん、いつも優しくしてくれてありがとう」
美緒は急な薫の変化に呆然とし、声も出せず立ち尽くして彼の背中を見つめていた。
◇
「やっと講義終わったな、今日は4人でカラオケ行かね?」
「いいねぇ」
すべての講義が終わり、陽キャグループはロビーのテーブルに集まっていた。快児はグループでカラオケに行くことを提案した。強太もそれに提案する。
薫を追放して4人になった今、彼らは一刻も早く女性陣2人と遊びたがっていた。
(へへ、真面目な薫の野郎がいねぇから、今日は瑠奈にボディータッチしまくってやる)
(快児が瑠奈の相手をしている隙に、俺は美緒を外に連れ出して……ぐへへ)
快児は瑠奈に、強太は美緒にそれぞれ好意を持っていた。いつもは大学以外で遊ぶときは5人だったため、良心の薫がグループにいたことで彼らの本性が抑え込まれていた。
そもそも瑠奈や美緒は、最初は薫と仲がよかったのだ。そこに快児と強太が加わり男女5人のグループになった。
そのため、今までは簡単に薫を追い出すことはできず、時間をかけてこの展開まで持っていったのだった。
(あぁ、早く瑠奈の胸触りて~)
(てか、早く美緒と付き合ってヤりてぇ!)
そんな下心を沸々と煮えあがらせている快児と強太とは裏腹に、瑠奈は立ち上がった。
「あー、アタシは帰るから」
「えっ、今日はバイトだってなかったはずだよな?」
快児は焦り、瑠奈を引き留めようとする。しかし今度は美緒も席を立つ。
「わたしも帰るよ。カラオケには行かない」
「なっ、なんでだよ……いつも講義のあとはグループで遊んでたじゃねぇか」
強太も焦り始める。
「そうね、いつも5人グループで遊んでた」
「「……っ!」」
今日、瑠奈と美緒は薫のことを快児と強太に散々聞いたが、彼らは適当に誤魔化すだけで何も言わなかった。
そんな彼らを瑠奈と美緒はすでに不審に思っていたのだ。
その後、彼らは女性陣を必死に引き留めたが彼女たちは振り返らず薫を追いかけて行ったのだった。
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