陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。

参戸芽 ショウジ

プロローグ

かおる、おまえもう俺たちのグループから抜けろよ」


 その日の放課後、藤堂とうどう 薫は大学で行動を共にしているグループの男子である大熊おおくま 快児かいじ蜂羽はちば 強太きょうたの2人とカフェで会っていた。


 男子3人で会うなんてめずらしいな、と思いながら待ち合わせ場所に言った途端、彼らが口にしたのは追放宣言だった。


「おまえオタクなんだってな。アニメとかキモい小説とか読んでんだろ? マジでないわ」


「それにお前、真面目過ぎてつまんねーんだよ。女と遊んでるときも、お前がいるせいで冷めるわ」


 次々と理不尽な言葉をまくし立ててくる快児と強太。


 いきなりグループを抜けろと言われ、さらに悪口をまくし立てられて薫もいい気がするわけがない。しかし、彼は大人の対応をした。


「……わかったよ」


 それに、急に手の平を返したようにこんなことを言ってくるやつらと仲良くしようという気ももうなかった。しかし、薫にはひとつだけ気になることがあったので問いかける。


「おまえたちが、俺にグループに居て欲しくないっていうのはわかった。けど、七瀬ななせさんと宮波みやなみさんの意見を聞かないのはどうなんだ?」


 彼ら陽キャグループは、今ここにいる男子3人に七瀬 瑠奈るなと宮波 美緒みおの女子2人を合わせた5人のグループだった。


 これ以上グループに残るつもりはなかったが、彼女たちの考えも尊重するべきだと思った。


「あーはいはい、あいつらもてめぇみたいなオタクグループに要らないって言ってたよ」


「てかお前、瑠奈と美緒の意見もって……ぷぷっ、笑わせんなよ。あんなイケてる女子二人が陰キャくさいオタクの肩持つわけねーだろ」


「「ひゃははは!」」


 むろん、彼らが言っていることは嘘である。瑠奈と美緒には一切この話をしていなかった。


 もちろん薫もそのことを疑っていた。


「それなら、いまここで通話をかけて確認するよ」


 チャットアプリを使い、この場で瑠奈と美緒に通話をかけようとする薫。しかし、そんな彼のスマホを快児が思い切り蹴り上げた。


「あいつらも同じ意見だっつってんだろ!! おまえマジでうぜぇんだよ!」


 スマホは吹き飛び、地面に落ちてしまう。


 そして、地面に落ちたスマホを強太が拾い上げ、薫のチャットアプリから瑠奈と美緒のアカウントを削除してしまう。


「おい、なにやってんだよ。返せ」


 薫は強太の手からスマホを奪い返すが、すでに瑠奈と美緒のアカウントは消され、グループチャットからも薫が自分で退会した形になってしまっていた。


「おまえ、今後瑠奈と美緒に話しかけんなよ」


「もしおまえがあいつらに話しかけたら、俺たちで瑠奈と美緒犯しちゃおっかな~」


 下卑た笑みを浮かべ、瑠奈と美緒を人質にとる快児と強太。


 正直言いたいことは色々あったが、これ以上何を言っても無駄だし、自分が行動することで瑠奈と美緒に危険があってはならない。


 そう思った薫は一言だけ残し、この場を去ることにした。


「わかった、もうグループを抜けるし俺から彼女たちにはなにも話しかけない。その代わり、七瀬さんと宮波さんが嫌がるようなことをするなよ」


「ひゃはは! 最後まで善人気取りかよ」


「まじできめー」


 薫が去ってからもそんなことを大声で騒いでいる快児と強太。


 そんな彼らの会話を、別の席から眺めるひとりの美女がいた。


 彼女は彼らが薫を理不尽にグループを追い出す様子をすべて録画していた。


「よし……声もちゃんと入ってる」


 彼女は録画したファイルを確認し、ひっそりと呟く。そして、いまだにカフェの中で大声で会話している快児と強太を睨みつける。


 おまえらに絶望を与えてやる。


 まるでそんな意思を感じられるかのような、怒りのこもった目で。

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