『母』が生まれた

昭和23年の冬のある日、母は生まれた。

いまだ戦後すぐであり、大変な時だっただろう。

いわゆる第一次ベビーブームの世代だ。


彼女は山陰地方から戦後大阪に出てきた夫婦の間に生まれた第一子だった。

二年後に生まれた弟もいたが、彼は存在感の薄いおとなしい子だったようだ。

彼女は幼少期、聞き分けの良い女の子らしい子だったらしい。

このあたりのことは彼女の母である『祖母』に聞いた話なのでそのまま書く。


祖母は何しろ頭がよく、手先も器用で、何でもこなす千手観音のような人だ。

その完璧主義の塊のような祖母に彼女はスパルタ教育を受けた。

(ちなみに私もこの祖母に育てられたのだが、これは別の話)

その過程で、彼女は何かを狂わせてしまった。

誰が狂っていたのだろう。戦後の混乱のせいか生来の性根のせいか。


時代の被害者だとは言わせない。少なくとも。



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『母』が死んだ フミヨ。 @miyuyun

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