第43話
いい加減、決着を着けるかと私はアイリスの腹部に蹴りを入れると、痛みに耐える様に彼女は唇を噛んだ。
「いくら催眠とはいえ、全く無い感情を植え付ける事はできない。つまり、アイリスは少なからず私に対抗心を覚えていたということね」
私はアイリスにそう語りかける。それに反応したように彼女は私に飛び掛かってくるが、私は簡単に去なしてしまう。
彼女からすれば膠着状態。しかし、私からすれば幕引きをどこにするかだった。
すると背後からウイリアムが加勢し、二対一の構図となった。
ああ、あの時を思い出すな、と私は思いながら彼らの攻撃を去なしていた。
「いい加減、倒れてはどうだ……」
魔力の使いすぎで息切れを起こすウイリアムは、膝に手を付きながらそう言うと、アイリスは彼を心配するように背中を擦っていた。
「そうやっておままごとでもしてたの? 操ってまで人心掌握をしたいのね」
「アイリスは僕の妻だ。どうしようが僕の勝手だろう」
「同しようもないほど荒んでるわね。親の顔が見てみたいわ」
ウイリアムはアイリスから剣を奪うと、私に向かって突進してきた。しかし、疲労困憊の彼の動きは鈍く、私はあっさりと彼の右腕を切り落とした。
痛みに喚く彼を見下ろしながら、私はその剣を奪った。
「返してもらうね。これは元々、私の物だから」
「ぐぅ……頼む、助けてくれ……このままでは、死んでしまう」
「そう。じゃあ天界で待ってるわね」
私はそう言うと、アイリスの元へ歩いていく。まだ催眠が聞いているのか私が近づいた分、彼女は後退った。
壁際まで追いやると流石に彼女の足は止まり、ウイリアムの意識が無くなったからか彼女は正気に戻った。
「セレナ……」
返り血を浴びている私を見て、アイリスは言葉を失っていた。
「大丈夫、殺してない。ルティスが治療してくれてるわ」
「私は……私は……操られていたとはいえ、あなたに剣を向けてしまいました……」
「いいのよ。わかってたし。どこかアイリスに嫌われているって」
私がそう言うと、アイリスはそれを否定した。
「違います!あれは、私の弱い心のせいです。あなたのようになりたい。でも、なれない。そのせいで知らない内に手の届かないから嫌悪していまっていたのかもしれません」
「そうね。あの術式だと、そういう気持ちがないとあそこまでの拘束力を生み出さないし」
私は乱れた髪を整えながらそう言うと、アイリスは泣きながら私の胸に縋った。
彼女を受け止めて抱きかかえると、アイリスの父である国王が姿を見せた。
「これは何事かね」
「父上……」
アイリスは父である国王を見ると、気不味そうに目線を落としていた。鎮静化した暴動の名残なのか、少しざらついた空気が流れたが、その空気を払拭するようにミヤが高笑いを上げた。
「お主がこの国の王か」
「如何にも」
「ならばすぐに娘の婚約は破棄にすべきじゃ。この状況がそれを物語っておるじゃろう?」
「むう……セレナ殿、説明をしていただけるか?」
私は王の間に行き、事の全てを説明した。暴動の原因、そしてシェーダー家の狙い。それらはすでに国王の知るところではあった。
「なるほど。以前の約束通りということだな」
「ええ。ウイリアムとの婚約がなくなれば、シェーダーも面は潰れるでしょう」
「しかし、闇社会については根本的な解決には至っておらぬが」
「それについては邪神教という宗教をご存知ですか? それがなんとかするでしょう」
「信じても良いのか?」
「ええ、もちろん」
私はそう言い切るとその場を立ち去った。
アイリスは戻ってきた私を見つけると、私に頭を下げた。
「私はあなたに結局頼ることになりました。あれだけの啖呵を切っておきながら……」
「いいよ別に。それにさ、アイリスだって自分の手で解決したかったんだし、その姿勢は評価してるよ」
「ありがとうございます……何か礼をしなければなりませんね」
「うむ。わしは広い屋敷が欲しいぞ」
ミヤが私の隣に立ってアイリスにそう言うと、アイリスは彼女が何者か知らなかった事を私は思い出した。
ミヤが私の母親であることを告げると、驚きのあまりアイリスは目を丸くしてしまっていた。
「よかったですね。生きていて」
「まあ、わしも神じゃからな」
結局、ミヤの希望が通り私達に広い屋敷が提供された。その屋敷はトルーマンの所有物で、フィリスが予てより私達に良いのではと長らく使われて居なかった屋敷を改装したらしい。
引越し作業を済ませてついに一人一部屋の生活が送れるぞと私はベッドに大の字になって寝転がった。
すると突然、アイリスが訪れると私と二人で話がしたいと申し出たため、自室へと通した。
「あの……セレナの願いはなんでしょうか?」
「私の願い? 願われなれてるけど、願うことないからなぁ」
私はそう言って頭を掻いたが、ふと目に入ったアイリスの足を見て「アイリスが欲しいかな」と冗談で言ってみた。
すると、真に受けたアイリスは私の側により「では、お好きにどうぞ」と目を閉じた。
「ここじゃなく、ベッドの上がいいかな? ほら、昔みたいに二人で寝ようよ」
「わかりました。ですが……」
アイリスは私の懐に飛び込んでくると、またも目を閉じた。
「こうしていると、亡くなった母を思い出します。幼い頃にこうしていると、安心できたものです」
「そう」
私はあえてこれが女神の力であることを黙った。
そして胸の中にいるアイリスに微笑みかけると、彼女は申し訳なさそうに笑った。
「いつの間にか背の高さも越されてしまいましたね」
彼女の言葉に私は優しく頷くと、彼女を抱きかかえて寝室へと連れて行った。
「待ってください……」
「ん?」
「私だってもう大人ですから……」
そう言って服を脱ぎだすアイリスを私は思わず顔を手で覆い、指の隙間からその姿を見ていた。
「大人って、婚約を一度したくらいで大人ぶらないでよ。いや待てよ……もしかしてウイリアムと……」
「致しておりません!なんで卑猥な妄想をされるんですか……」
「ごめんごめん」
私は笑いながらそう言うと、彼女に習い服を脱いで下着一枚になった。
肌を重ねると、アイリスの温もりを感じ取れ、アイリスも私の温もりを感じ取っていた。
「ねえ、アイリスは私のこと嫌い?」
そう訊ねると、アイリスは少し黙ってから「いいえ、今はとても好いてますよ」と答えた。
「そっか。嬉しい」
「ええ。ですから、今後ともよろしくお願いしますね」
彼女はそう言うと私の体を弄った。
ああ、前にもこういうことしたっけな、と私は思い耽っているとアイリスは私の頬にキスをした。
「どうかしましたか?」
「やっぱり、もう子供ではないのね」
「ええ。だから言ってるじゃないですか」
私は仕返しと言わんばかりに、彼女の股の間に足を入れる。
「あっ……」
艶のある声をアイリスが吐き出すと、私はそのままアイリスの口を閉じた。重ねた唇の隙間から舌を入れると、アイリスもそれに答えるように舌を絡めて来る。
その間も彼女も股下を弄り続けていると、接吻の合間に漏れる喘ぎに私は興奮した。
「あ……」
「まだする?」
アイリスは私に襲いかかるように唇を重ねてくると、私は彼女に覆い被さられる形となった。
「セレナ……」
私の名を連呼するアイリスは、今度は私の乳房を舐め回す。
私は喘ぐことはせず、ただその様子を見ていると赤子が母乳を求めるように見えた。
「セレナ、私おかしくなってしまったのでしょうか?」
「ううん。これは私の力のせいだと思う」
「そうなのですか?」
アイリスは手を休めることなく、私の体を求め続けていた。
私はアイリスの頭を撫でると「可愛いなぁ」と呟いた。
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