第4話 変身魔法と変身解除


 僕がユイちゃんの大事な所を守るんだ!


 履き心地はさらさらつるつると完璧に仕上げて、なおかつゴムは緩すぎずきつすぎない絶妙なフィット感! 市販のパンティーとは比較にならない程の安心感を提供するよ!


 そしてさりげなくその腕の中へ。


 むふふ……ユイちゃんと添い寝……かわいいおててに包まれて……ああ……僕の方が安心感抱いちゃってるよぉ……






 朝。


「……ふわぁぁぁぁ」


 カーテンから漏れる朝日に照らされて、ひょっこりと目を覚ましたユイちゃんが、両手を伸ばして欠伸をする。


 そのまま寝ぼけ眼を擦る。僕を手に持ったまま。


「…………え?」


 持っているはずがない物の感覚にユイちゃんは凄くびっくりしているようだ。寝起き特有の混乱した頭のまま必死に考えている姿がまた凄く愛らしい。


 ポリポリと頭をかきながら暫くすると、新品のタグが付いていることに納得したのかベットから起き上がった。


 そして伸びきったゆるゆるのパンティーをするっと脱いだ。


 ふぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!


 サンライズっ! サンライズゾーンだっ!


 朝日いい仕事しすぎだろいい加減にしろ嘘ですもっとやれありがとうございます!


「あっ風呂……」


 そこまで脱いでから何故かユイちゃんは風呂場へと向かった。


 ベットの上に放置された僕。


 シャアアアアアァァァァァとシャワーの音が聞こえてくる。


 え? 朝シャンなんて珍しい……今日は何かあるのかな?


「パンツパンツ……」


 風呂場から出てきたユイちゃんは水滴を付けたままパンツを探す。そして僕を持ち上げてジロジロ見だした。


 ユイちゃんはかわいいなぁ。


「こんなパンツまで買って……はぁ……何やってんだろ私……」


 そして僕を両手で広げ、片足を通した。


 ああ……これはヤバい……暴力的アングルぅ……


 上を見上げれば屈んで影になっていることで眩しい朝日とのコントラストがさらに映えて美しい……


 昨日の僕に拍手を送ってやりたい……


 もう片方の足も通すと、するすると僕を持ち上げていく。くるぶしからふくらはぎ、膝を通って太もも、そして……


 最後にゴムに掛けた指を外し、パチンッと小さな音を立てる。


 Foooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo‼


 ユイちゃんと一体になってる!


 ぷりぷりの可愛いお尻に、名前を言ってはいけないあの場所に、僕がユイちゃんの大事な所に覆いかぶさってる!


 なんて高揚感! 風呂上がりでも仄かに香るメスの匂いが激しく頭を殴りつける。


 男なら誰もが一度は空想して、思春期の痛々しい妄想だと諦めていく……


 でもとうとう僕はやったんだ‼


 男の夢を叶えたんだぁぁぁああああああ‼


 鏡の前に立ったユイちゃんはその艶やかな下着姿を様々な角度で確認して、


「…………行くしかないかぁ……」


 少し暗い表情で支度をすると家を出た。






 周囲の音やサンセットゾーンの他のメンバーからの会話から察するに、どうやら今いる場所はパーティー会場らしい。


 綺麗なドレスに着替える時にあれっと思ったけど、まさか今日がパーティーだったなんて知らなかったよ。


 勿論常に服で隠れているので周囲を見ることは出来ない。


 でも、ふふふ……トイレは流石に興奮したなぁ……


 だってあんなとこ見たこと無いもん……反則技だよね! 血管切れるくらい興奮したよ! パンティーになってなかったら死んでたかもね!


 ん? 誰かと喋ってるなぁおっさんかな?


 わわわっ、めっちゃ走り出した!


 ふぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお⁉


 めっちゃ擦れるぅぅぅっ!


 ん? 今度は誰だろ? やけにカッコいい声だなムカつく野郎だ……


「なぁ、いいだろ? こんなとこバックレて俺と一緒に踊ろうぜ? 子猫ちゃん」


 なんだこいつだっせぇー。


 アイドルの中のアイドルであるユイちゃんがお前みたいなダサい奴の誘いになんて乗る訳ないだろJK常識的に考えて


 そこらのアイドルと一緒にするんじゃないぞ⁉ なんたってユイちゃんはサンセットゾーンのセンターなんだから!


 あれ? なんか匂いが変わったような……?


「……い、いきます」


 え? 行っちゃうの?


 二人は些細な会話をしながら歩いていく。


 え? ほんとに行っちゃうの? 嘘だよね? 嘘嘘嘘! ドッキリでしょ⁉


 ガチャ


 今部屋入った⁉ ねぇ! え? 何で⁉


 ぼふっ


 え⁉ ベットに押し倒されたよね今……え……? 本当にやっちゃうの……?


 あれ……? 湿っぽい……


 ははは……僕泣けてきちゃったみたいだ……ねぇ……悪い冗談か何かなんでしょ……?


 やめてよぉ……アイドルは……誰ともツキ合ったりしないんだよぉ……


 だんだん腹が立ってきた。


 僕は怒ってるぞ! こんな事をするのはいったい誰なんだ! 冗談でも許さない! 顔を確認していつか直接殴りに行ってやるっ!


「へぇ……可愛い下着」


 その時ドレスがめくられ視界が開けた。


 え⁉ お前は⁉


 その顔には見覚えがあった。


 そうだ! いつか十一といち氏に見せてもらった写真に写っていた男だ!


 いや待て……どうしてこのイケメン野郎がここにいるの……? だってこいつは……十一氏が変身した姿……


 僕を裏切るのか……? 中学からの友達だと思ってたのに……そう思ってたのは僕だけか……?


 君はそうやって僕から大事なものを奪っていくのか……?


「んん……」


 二人が唇を重ねた。


 そうか……そういう事をするのなら……


 僕は君を許さない……


 ピロリン!


 そうだ許さない……


 許さない……許さない……


 許さない……許さない……


「おっ健太からメッセきてんじゃん――――――」


 絶対に許さないっ! ぶん殴ってやるっ!


 いや待てっ! 怒りに支配されるなっ! 僕がここにいる目的を思い出すんだっ!


 そうだ! ユイちゃんは騙されてるっ!


 こいつをぶん殴って正体がキモオタだって教えてあげないとっ! 僕がユイちゃんを守らないと‼


「ははは! バカな奴だぜ全く!」


 畜生ぶっ殺してやるっ‼

 

「変身解除も回数にカウントされるってのに――」


 御託はいいっ! 今はその無駄に整った端正な顔に一発ぶち込んでやりたいっ!


(へ・ん・し・ん・か・い・じょぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお‼)


「もう一回しか残ってねぇじゃん――」


 あれ……? 元に戻らない……?


(へ・ん・し・ん・か・い・じょぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼)


 あれ……? おかしいな……


(へ・ん・し・ん・か・い・じょぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼)


 …………え? …………なんで? なんで戻らないの……?


 あ……


(変身解除も回数にカウントされるってのに)

 

 カードキー……解除……歯ブラシ……解除……ボディーソープ……解除……パンティー……


 もう……回数が……残ってない……

 

(へ・ん・し・ん・か・い・じょ! へ・ん・し・ん・か・い・じょ! へ・ん・し・ん・か・い・じょ! へ・ん・し・ん・か・い・じょ! へ・ん・し・ん・か・い・じょ‼ へ・ん・し・ん・か・い・じょ‼ へ・ん・し・ん・か・い・じょっっっ‼ ……へ・ん・し・ん・か・い・じょ…………)


 解除できない……


「わりぃな健太」


 おいおいおい……おいおいおいおいおい……!


 やめろよ……そんな残酷なことってないよ……


 好きな子が友達に汚されるのを何もできずに見てろって⁉ ここで指くわえて見てろって⁉


 ふざけんなぁ‼ 畜生ぅぅぅ……‼


 あんまりだぁぁぁああああああ‼






***






 変身解除……? まさか……空耳だよね? どんな内容なんだろ? 気になるなぁ……


「ねぇ……変身解除ってなに?」


「あっ、いや、なんでもねぇよ! ははは!」


「……」


「それより……続きやらね?」


 田中君はスマホを置くと私の方へと歩いてきた。


「もう……」


「待たせたな」


「田中君のエッチ……」


「ユイちゃんだってそうだろ?」


「隙あり!」


「ちょえ⁉」


 私は勢いよくベッドから起き上がると田中君のスマホを手に取った。


「あ、おい勝手に!」


 素早く写真フォルダーを開く。そこには、趣味の悪い髑髏のTシャツを着たぶっさいくな男が映っていた。


「誰?」


「あ……いやその、それは……連れだよ! 連れ!」


「田中君と同じ服着てるけど?」


「う、いや、ああ、それはあれだ! 泊まりに来た時に貸したんだ!」


「なんでそんなに焦ってるの?」


「え⁉ いや別に焦ってねぇし!」


「本当?」


「ほ、本当だって! 気のせいじゃねぇの⁉」


「友達ねぇ」


「そうそう友達友達!」


「これが田中君の友達? 接点無さそうだけど」


「む、昔からの親友なんだ! 根はいい奴だぜ!」


「ふーん。こんないかにもクズで臭そうでダサくてチビでガリガリでキモくて陰キャ

のくせにイキリ散らかしてそうな奴が?」


「てめぇこのアマ‼」


 パチン!


「キャッ‼」


 ドサッ


 いきなり田中君にビンタされてそのままベッドに倒れ込んだ。


「せっかく気持ちよく抱いてやろうと思ってたのによぉ‼」


「いやっ!」


 そのまま私の上に馬乗りになって私のドレスを引き裂いていく。


「お前らはいつもそうだ……ちょっと自分の顔がいいからってよぉ……上から目線で見下しやがって……」


「やめてっ!」


 顕わになったブラも強引に引きちぎられる。


「俺がお前らに何したってんだよ……人の顔見てひそひそひそひそ……隣に座れば席開けて……近くに寄れば距離開けて……人が病原菌か何かに見えてんのか……?」


「離してっ!」


 やがてその手は私のパンツにかけられた。


「うるせぇ‼ ブスを人間扱いしねぇお前にもなぁ、人権なんてねぇんだよぉ‼ むしろ抱いてもらえるだけ感謝しろォ‼ 顔が良くて良かったなぁクソアマァア‼」


 このままじゃやられる! こんなクズみたいな男に純潔を散らされる!


 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ! 嫌だ!


 いくら見てくれが良くても中身があれなんじゃ嫌‼


 こんな男にボロ雑巾のように汚されるくらいならもう……もう……あれを使うしかない……


(へ・ん・し・ん・か・い・じょ)

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