第11話 -三日目-代表選考会義
今日は別段何事もなく、一日が過ぎ放課後になった。
「さて、今日はウォーゲーム代表候補の顔合わせだったな」
俺は個人戦の出場が決まっているため直接の関係はないが、星が行く場所に俺もまつりもいないという状況は避けなければならないため一緒に行くつもりだ。
「生徒会には遅れるから一応夏葉に連絡を入れておくか」
昨日の生徒会で夏葉も個人戦に出ることになったと言っていたから、彼女は今日も変わらず生徒会室に行くはずだ。
龍仁 「夏葉~今日のウォーゲームの顔合わせ、俺も星の付き添いで行くから生徒会遅れるわ~」
俺がそうメッセージを入れるとすぐに既読が付く。
夏葉 「わかったよ~生徒会室で待ってるね」
……。
とりあえず俺が遅れても大丈夫だろう。
連絡を入れた俺は星と雪乃に声をかけて顔合わせ場所である第七会議室へ向かった。
会議室の前に着くと俺は立ち止まり後ろをついてきていた二人に振り返る。
「さてここからの主役は二人だ、どっちから入る?」
この二人、特に雪乃は自己表現が薄い。
影が薄いとかそういうことはない。むしろ普通にしていれば相当目立つような顔立ちをしている。
しかし普段はおどおどとした地震のなさげな雰囲気をまとっている。
俺は何かと目立っているため俺から入っては変に注目を買ってしまうだろうと考えて、二人の自発性を高めるためにもとこんな提案をしてみたのだ。
二人とも、俺から入るものだと思っていたのか迷っている。
だから俺はいつも自己表現の薄い雪乃に振ってみることにした。
「どうだ、雪乃。今日は最初に入ってみるのは」
このくらい些細なことでも、自分に自信のない雪乃には効果があるんじゃないかと思う。
「私ですか?」
「ああ、雪乃にはもっと自信をつけてほしいからな。せっかく顔も可愛くてスラっとしてるんだ自信を持てたらもう敵なしだぞ」
俺はとどめの一撃を放った。
「龍仁さん……そんな……」
しかし話はここでは終わらない。
「今回は譲りますわ、私は昨日結婚についてお話したので」
雪乃とばかり喋っていていつのまにか拗ねてしまっていた星が雪乃を煽る。
「……ケッコン?」
また雪乃の背後から、出てはいけないオーラのようなものを感じる。
「おいおい、今はそんな話をしてる場合じゃ……」
「そんな話?私は一度も結婚の話などしてもらったことありませんが」
「雪乃さん、嫉妬は醜いですわよ」
「星さん?あなたこそ構ってもらえないからって拗ねるなんてお子様ですね」
二人の間で火花が散らされる。
こういう時の雪乃ははっきりと物が言えるんだな……。
現実逃避から見当違いなことを考えてしまう。
「ま、まぁまぁ二人ともとりあえずウォーゲームに集中しよう。二人にとっては違ってもこの学校では一大行事なんだから」
俺はそう言って二人をなだめる。
何とかなりそうだと思っていたところ、さらなる問題が飛び込んできた。
「二人にとっては違っても?聞き捨てなりませんわね?」
後ろから聞きなれない声が投げかけられる。
「そんな意識の低い人たちと共闘したくないですわ、いくら十色の一員とは言ってもチームの士気にかかわりますもの!」
どうやら2年の先輩のようだ。
会長のような特殊な例でもない限り、顔も知らないということはほとんどありえないがこの先輩もあまり見覚えがなかった。
俺は気づかれないように
ふむ。
ウォーゲームの代表候補に選ばれるほどの実力者ならば、俺が知らないはずはないと思うのだが。
とりあえず挨拶をすることにした。
「花園先輩ですよね?お疲れ様です。先ほどの発言には紆余曲折がありまして……」
「あら、私を知っているの?」
「いえ、すみません。お名前だけしか……」
実際俺の龍眼をもってすればより詳細な情報を見ることも可能だがさすがに初対面の女性に使うのは気が引けた。
「別に構わないわ、当代最強と言われるあなたに名前を知っていてもらえるだけでも光栄ですもの」
先輩からの印象はある程度払拭できたようだが背中に刺さる二人の視線が痛い。
「ほら、二人とも先輩も来たことだし中に入ろう?」
「龍仁さん、あとでお話が」
「龍仁様、私もお話が」
「わかったわかった。後で、な?」
何とかここをやり過ごし、無事会議室へ入ることができた。
「これで全員か?」
厳格な声が室内に重く響く。
声に似合わないチャラそうな見た目の3年の先輩がそう確認をする。
会議室には3年生が5人、2年生が花園梨々香1人、1年生が星と雪乃の2人の8人の候補がそろった。
「では、顔合わせ兼代表メンバー選定会議を始める」
見た目と声のギャップがすごい先輩が取り仕切るみたいだ。
まずは軽い自己紹介から始まった。
名前から使える魔法などの軽い情報交換がなされた。
そして、最後の雪乃が自己紹介を終えたあと視線は俺に集まっていた。
「あ、えーっと自分は候補ではなく、ただの付き添いなのでお気になさらず」
俺がそういうと3年生の一人から声が上がる。
「はっ、当代最強様は好色家なんだな女を二人もつれてよ」
さすがにこの態度には腹が立つ……。
おっと、俺は当代最強。妬まれることなんて慣れている。
ここで争っても良いことはない適当に流そう。
「ははは。そんなんじゃないですよ」
「付き添いが必要な奴なんて代表にふさわしくないよなぁ」
その3年は周りに同意を求めるように隣を見ながらそう言う。
俺の思考が好戦的なものに変わる。
ほかの3年も思う所があったらしく止めるそぶりすら見せない。
星も雪乃も顔には出さないがイライラしているのはわかる。
ほう、そういう態度をとるんだな。
俺のことは別に馬鹿にされても見過ごすが星や雪乃を馬鹿にされるのは我慢ならない。
俺が反論しようとしたとき思わぬところから声が上がった。
「代表にふさわしいかどうかは実際に試してみなくてはわからないのではなくて?」
さっき入り口で揉めかけた花園梨々香先輩だ。
「なんだと?」
「わたくし、何かおかしなことを申しましたか?」
ねぇ、お二人とも?と言って星と雪乃を見る。
2人とも首を横に振る。
「では、対戦してみてはどうだろう」
最初に音頭を取っていたチャラそうな外見なのに声が渋い3年がそう提案する。
「俺は、ふさわしくないとは思わない。魔法の実力とは無関係だからな」
「だから、ふさわしくないと思うなら対戦してみたらどうだ、1年生2人は十色なんだし3年相手でも大丈夫だろう」
「おいおい岩戸、いくら十色とはいえ3年対1年なんて話にならないだろ」
渋声チャラ男は岩戸というらしい。顔は見たことがある。
しかし岩戸はその声を無視し、「銀世さん、紫乃さん対戦してもらえるかな?」と言った。
「私は構いません」
「私も構いません」
星も雪乃も完全に臨戦態勢だ。
「では、俺以外の3年四人対1年生の2人でいいかな?」
おいおい、岩戸先輩その条件はあんたも絶対思うところあるんだろ。
「「構いません」」
臨戦態勢に入った2人は全く意に介していない様子だ。
まぁ実際あの2人なら問題はないだろうが。
「ちょっとよろしくて?」
ここでも声を上げたのは花園先輩だ。
「さすがに四対二はアンフェアすぎません?私も1年生の方へ加わって戦いますわ」
花園先輩きつそうな人だと思ったけど、もしかして曲がったことが許せないだけのいい人なんじゃ?
「いいだろう、では演習棟へ向かおうか」
まあ魔法使い間の関係は年功序列ではなく実力主義だ。
星も雪乃も相当な実力者だし、人のよさそうなあの先輩なら急に加わっても問題ない。
そもそも4人であの2人を相手できると思っている先輩など相手にならないだろう。もはや結果は見えており、俺は何も言わず彼らの後ろについて演習棟へ向かった。
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