第5話 配信3回目 【初見】マルオカート【視聴者参加】 マザーマシン制作

「こんばんにゃ! 宇宙人系地球救済委員会委員長モコス・イクシスにゃ!」


:きちゃー

:にゃ!にゃ!


 本日の視聴者は76人。一気に増えたのは地球救済委員会のメンバーの働きだろうか。いくつかの切り抜きがあがってどれも100再生を超えていたのをモコスも確認していた。


「はい、というわけで義務にゃも済ませましたので、本日はマルオカートをやろうと思います」


:語尾はずっとにゃにしろ!

:地球救済計画はどうなった?

:それ大事な


「まずは物質合成機から小型の工作機械、マザーマシンの部品を作っているところですね」


 物質合成機は地球で言うところの3Dプリンターのようなものだ。銀河連盟のテクノロジーによってほとんど何でも作れるし、その作成速度は早いが、大きな物は作れないし一つ一つセッティングをして作る必要もあり、大型のものや部品点数の多い物を作ろうと思えば効率が悪い。

 それでまずは物質合成機で部品やパーツを作って組み立て、部品やパーツを作るための工作機械を作る、そうモコスがゲーム画面を操作しながら説明をする。


「必要なマシンを生み出すための工作機械、それがマザーマシンです」


:ほへー、大変そうやな

:なんの話???

:物質合成機とか地球救済計画とか突然なんぞ

:我々は地球救済委員会のメンバー。地球救済計画のお手伝いをしているのだ

:マルオカートの裏で一体

:ゲームやってる場合なのかなあ……


「視聴者が増えてますから、事情を知らない人が結構来てるんですかね?」


:切り抜きから

:おすすめから来ました

:マルオカート初見と聞いて


 モコスが宇宙怪獣や地球救済計画について説明しようとすると、前回居たメンバーたちがコメントで説明をし始めたので、操作に集中することにした。どうやらもうwikiまで作ってしまったらしい。


「と、これで始められそうですね。初見でやったことはないんですが、他の配信者がやっているのを見たことがありますから、ご期待には添えないかもしれません」


:はいフラグ

:これはわからせないと!


「それで最初のマザーマシンから色々作りますから精度と汎用性が求められますので、その完成に一〇日ほどかかる予定です。ソロで少し練習するか、いきなりマルチで対戦するか。どちらにしますか?」


:時間がかかるんだな

:待ってる間は普通の配信活動するしかないか

:マルチで行こう

:対戦対戦


「対戦希望が多いですね。今日も最初からそのつもりでしたから、マルチでやってみましょう」


 コメントの指示を見ながら対戦用の部屋を作り、入るためのパスワードを画面に公開する。


「マザーマシンができたら、そこから更にいくつかの工作機械や作業用ロボを作っていきます」


 コメントの助言でマシンを選択し、コースを選ぶ。


「操作確認。しかしえらく原始的ですね?」


 話しながらもゲームは進行する。カートがずらりと並び、カウントダウンと共にぽん、ぽん、ぽーんとスタートの合図が鳴らされた。


「あ、もうはじま……あ? あれ?」


 あっという間に他のプレイヤーが視界から消え、慌てて追いかけようと加速ボタンを押すも、まっすぐにコースから外れて落下してしまう。


:いきなり落下は草

:やはり初心者

:曲がる素振りもなかった件


「すぐに復帰できるんですね……しかしこのコース危険すぎじゃないですか?」


 モコスは今度は慎重に、曲がりくねったコースをクリアしていく。モコスの学習能力は高いのだ。


:おっそ

:レースだってわかってらっしゃる?

:「ご期待に添えないかもしれません」

:これは期待以上。逸材ですわ

:初見のままプレイさせて正解だったな!


「加速ボタンは押しっぱなし? それはちょっと狂気じゃないですか? ゲームだからそんなもの? わかりました……あ、あっ、あ~~」


:ぐにょんぐにょん

:操作が雑ぅ

 

 モコスのカートは速度が乗ったのは良いものの、右に左に面白いように勢いよくかっ飛んでいく。


「う、うるさいですよ。これほど原始的な操作だとは思わなかったんですよ!」


:宇宙船を操縦するのでは?

:地上を這う乗り物など楽勝とイキっておられましたなあ


「宇宙船の速度をわかってますか? マイクロ秒での判断が要求されるのです。指示だけして実際に動かすのは宇宙船の頭脳なんですよ」


 モコスは早口で言い訳を並べ立てる。操作法は単純に見えたし、実際にやってみるとこれほど難しいとは思わなかったのだ。

 それでも周回遅れになりながらも、コメントに教えてもらいコースレイアウトやアイテムの使用法、カートの操作を覚えていく。


「システムはおおむね理解できました。次は一位は難しくとも上位を狙ってみましょう」


:またそうやってすぐにイキる

:じゃあ同じコースでやろうか

:今度も最下位なら罰ゲームね

:あ、いいですな


「罰ゲームですか。いいですよ。この高性能アンドロイドの手にかかれば最下位はもうありません」


:フラグいっちょー

:高性能()

:本気、出しちゃいますか


 今度はモコスもスタートの合図と同時に加速ボタンを押し込む。


「あ、あれ? なんでわたしだけ遅れてるんですか? スタートダッシュ? 常識???」


 それでもモコスのカートはかろうじて最後尾の集団に食らいついていく。


:うまくなってる

:まだ怪しい動きしてるけどね

:ブレーキ使いすぎだな

:あ、バナナ踏んだ


「ふぁっ!? なんで機体がスピンしてるんですか? あの黄色いちっちゃいやつがバナナ? あー、あー、また!」


 今度は緑の甲羅が飛んできて、モコスの機体を吹き飛ばす。そこから復帰して加速しようとしたところでまた機体がスピンする。


:バナナ全部踏んでいくのは草

:今回も周回遅れ確定ですな

:罰ゲーム!罰ゲーム!

:何をしてもらおうかなー


「コ、コントローラーが原始的すぎるんですよ! それになんですか! 緑のやつで吹き飛ぶのはまだ許せますが、黄色のちっちゃいやつごときでなんで機体がスピンするんですか! 欠陥機体、リコールですよ!」


:機体じゃなくて、操縦者なんだよなあ

:モコスたん、涙目

:もう挽回は無理そうだね


 そのコメントの通り、圧倒的大差での最下位でレースが終わってしまう。


「くっ……」


:リアルで「くっ……」って言う人初めて見た

:罰ゲーム確定

:モコスたん泣きそう


「罰ゲームは仕方ありません。ですが、このまま最下位では終われませんよ。もう操作もレースの感覚も掴みました。次は最下位から脱出です」


:お、そうだな

:ハードル下げてて草

:まだ無理じゃないかなあ


 モコスの学習能力は高い。バナナを回避し、アイテムも活用し、集団の後方に食らいついていく。


:おお、今回はいけそうか?

:無敵使って抜いたー


「やった! ついに最下位脱出……って、あああああああああああ」


 ゴール直前、モコスは後方から突っ込んできたミサイルで見事に吹っ飛んだ。当然コースアウトし、最下位のリザルトが画面に表示される。


「わあああああああああ」


 モコスは叫びながら思わずコントローラーを投げてしまった。壁に当たるガツンという音が配信にも乗ってしまう。


:いまコントローラー投げた?

:アンドロイドもコントローラー投げるんだなあ

:モコスたんほんとにアンドロイド?

:人間だろ


「投げてなんかいませんが。わたしは物を大切にするアンドロイドなんです」


 そう言いながら投げたコントローラーを回収し、壊れてないか確認をする。


:投げてんじゃん

:3Dだから動きが全部見えてるんだよなあ

:手の動きを見て思ったんだけど、もしかして付属のコントローラーでやってる?

:初心者あるあるやね

:プロコントローラーじゃないと、操作が安定しないかも


「プロコントローラー? そういうのがあるんですね。あ、これですか。購入しておきます。なるほどー。ハンデ戦でしたか。これはわたしが負けても仕方がないですね」


:付属のコントローラーでやってますが?

:ニコニコしてて草

:機嫌が治ってなにより

:でも罰ゲームは確定な

:ホラーゲームやってもらおう

:まあ無難ね。前回ダウンロードしたやつもあるし


「ホラーゲームですか。わたしは地球人の言う霊とか化け物とかよくわからないんですよね。暗い場所が怖いとかもありませんし、たぶんやってるのを見ても面白くないと思いますよ?」


:はいフラグー

:これは次回も楽しみ

:モコスたん思ったよりも感情的ね

:モコスたんをわからせたい

:それよりも地球の命運をだな……




【本日の成果】


 同時接続数89人。チャンネル登録者数71人。SNSフォロワー数102人

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