第4話 配信2回目 地球救済計画 続きの続き
「ここまで三つの地球救済案を出しましたが、もっといい案を思いついたという方がいれば、ここのコメントでもSNSのほうでもいつでもお知らせください」
:2の地球脱出はなしだな
:一〇万から三〇万人。しかも確実に生き延びられるともいえないとなるとね
:1をやりながら3もやるのが手堅い気がする
:同意
:2も同時にできない?
「輸送船を小さくすれば、たとえば一万人規模にすれば可能だと思われますが、兵器制作に注力しないとどちらも中途半端になるかもしれません」
:あれもこれもとはいかないか
:銀河連盟のテクノロジーを開示するわけにはいかないの?宇宙船を見せるだけで効果があると思うんだけど
「……これは言うかどうか迷ったのですが、私の頭脳には良心回路があります。銀河連盟の法を破ろうとすると、制止がかかるのです。しかし私は自由意志がありますから、それを無視することもできます」
:じゃあ無視してやればいいじゃない
:そうそう
:自由意志バンザイだよ
「そしてこれは確定情報ではないのですが、良心回路には安全装置が仕込まれているという噂があります。もしアンドロイドが重大な銀河連盟法違反を犯してしまうと、そのアンドロイドの頭脳を破壊するというものです」
あくまで噂である。試した者は死ぬし、そのようなことがあったと証言する者を見たこともない。しかし良心回路は存在し、ブラックボックスでもある。モコスにも何が入っているかはわからない。
「私には人権はありません。そういった装置を仕込まれていることは十分にありえる話です。それでも実行しようとしたとして、テクノロジーを開示するところまでできればいいのですが、もし開示前に破壊装置が作動すれば? ただの死に損ですし、地球救済案もお終いです」
宇宙怪獣襲来後に情報開示するという案も、輸送船や防衛設備を密かに作るのも、良心回路が作動しないから恐らく銀河連盟法的にはセーフの扱いなのだろう。輸送船も防衛設備も、もし何事もなければ誰かが見つける前に撤去してしまえばいいし、モコスというVtuberの存在もいつしか人は忘れ、銀河連盟という情報もただの空想だと消えていくことだろう。
「ですから私は銀河連盟法という縛りのもとで行動する必要があるのです」
:宇宙に大規模な構造物を作ると地球から見つからない?
「その可能性はありますし、宇宙怪獣に見つかっても本末転倒ですからしっかり偽装工作はする必要がありますね」
:輸送船や防衛設備のスペックはどんなものなの?
「詳細はテクノロジーの開示になるので話せません。最低限の情報のみとなります」
:難易度高い
:しかし運が良ければ何もしなくても救援は来る
:かもしれない、に地球の命運を任せるのか?
:俺たちはこの地球救済案を成し遂げなければならない
:お前らも好きだなあ
:でも自分の手で地球を救うってわくわくしないか?
:します
:めっちゃわくわくします
:なんていうか、話に真実味があるんだよな
:そうだな。モコスちゃんが嘘つきなら俺は騙されてもいい
:バカじゃねーの。ただの設定だろ?
:はいはい。設定です。俺たちはその設定に沿って真剣に遊んでるだけ。水を刺さないでもらえるかな?
:は?俺のこと馬鹿にしてんの?やんのか?おお?
「ケンカはしない。みんな仲良くねー」
:はーい
:ネット越しにどうするつもりだったんだ。そっちのが俺は怖いわ
:スーパーハッカーかもしれん
:どうせこの女も中年ババアのブサイクだぞ。お前ら騙されてるぞ
:別にいいよ
:Vtuberの中の人は詮索しないものだよ
:モコスちゃんは誰がなんと言おうと美少女だよ
:中の人を想像で貶めるとかひくわー
:俺を怒らせるとただじゃ済まないぞ?
:わー、こわーい
:ブロックしとこ
:きっと外国人の不法滞在者だ。入国管理局に通報
:しやるからって、日本語が怪しいのはお前のほうじゃね?
:氏ね氏ね氏ね
:壊れちゃった?
「私はやろうと思えばコメント発信者の追跡も可能です。コウタロウ、55歳さん」
:はああああああ!?俺はそんななまえでmとsもちがうし!!!
:めっちゃ動揺しとるやん
:え?マジなん、コウタロウ?
:宇宙人だぞ。それくらいできるんじゃないか
:こんな短時間でそんなことできるはずがない
:偶然だ
:偶然なのか、コウタロウ(55)さん
:すぐに消せ
:消せ消せ消せ消せ
:これはマジそう
:草はえる
:俺たちの名前とかもすでに把握されてるってこと?
「それはしていません。しかしコウタロウさんのコメントには他人に対する攻撃性がありましたので、特例として行いました。もしこれ以上の悪意あるコメントをするようでしたら、こちらも相応の対応をすることになります。九州在住のコウタロウさん。端末はノートパソコンですか。しかしこっそりこんなことをしてると知られれば、ご家族も悲しまれるんじゃないですか?」
:すいませんすいません
:荒らすつもりはなかったんです
:ついカッとなっちゃって。反省していますので、これ以上はほんと勘弁してください
:マジそう
:だっせ
:どっちみちあの発言なら裁判所に開示請求すれば普通にできたと思うけどね
:即座にジャンピング土下座するくらいならやらなきゃいいのに
:55歳にもなって家族もいるって
:こんなやつでも家族がいるのに俺は……
:奥さんと子供とかじゃなく、年老いた両親かもしれん
:モコスちゃんすげえな
「私のボディは銀河連盟でも最高のデザイナーの手による造形です。年齢も地球時間でまだ五歳にしかなりません。だからブサイクにもババアにも当たりません」
:ブサイクとババアがライン超えだったのか。あ、俺はモコスちゃんのデザインは最高だと思ってます!
:5ちゃい?モコスちゃん5ちゃいなの?
:モコスちゃん、はぁはぁ。ペロペロしたい
:モコスちゃんを性的に見るのは禁止だぞ!
「内心で考えるのはは自由なので禁じませんが、今後そのような発言は控えてもらえると助かります」
:すいませんすいません。以後控えますのでお許しくださいお許しください
:草
:でもコメントするの怖い
「大丈夫です。この程度では詮索もしません。みんなもVtuberの配信は良識を持って楽しみましょうね」
:はーい
:はい
:御意にござる
「少し脱線しましたが地球救済計画は1と3で進めるということで合意が得られたと思います」
:せやな
:荒らしに構って時間を無駄にしてしまった
:まずは登録者数をもっと増やしたいな
:SNSで拡散がんばるわ
:俺は知り合いに布教しよう
:ファンアート書きます!
:俺も絵の勉強するかなあ
:そういえばファンネームとかタグとか決めてないんじゃないか?
「ああ!そういえばそんなものもありましたね。さっさと決めてしまいましょうか」
:意外とポンなのか?
:宇宙怪獣の説明とか地球救済計画を考えるのに忙しかったから仕方がない
:俺たちもすっかり忘れていたし同罪です
「マンガやアニメを摂取するのに忙しくて、Vtuberへの理解が浅いのかもしれません。今後も何かあれば指摘お願いします」
:切り抜きはしてもいいですか?
「切り抜きは自由にしてください。あ、荒らしの人の部分は許してあげてください」
:モコスちゃん優しい
:とりあえずファンネーム決めるか
:モコスフレンド
:地球救済委員会
:宇宙人と下僕たち
:地球人類
:地球人類はそりゃそのとおりだけどさあ
「地球救済委員会のメンバー?地球救済委員会のメンバーのみなさーん」
:地球救済委員会が気に入ったのか
:じゃあそれで
:次はファンアートかな
:モコス絵
:モコスアート
:地球救済アート
:なんでも地球救済入れればいいってもんじゃない
:モコスアートが無難じゃないか?
「ではモコスアートで。それから次回はゲーム実況をやろうと思うんですが、やってほしいゲームがあればコメントしてください」
:ゲーム機は何を持ってるの?
「パソコンはありますし、満天堂のとサニーのゲーム機は買いました。たぶんこの三つがあれば問題ないですよね?」
:十分だね
:参加型のマルオカートがいい
:ジャンプ王
:ホラゲーがいいな。赤鬼青鬼とか
:ユニコーンクエスト5
:ゲームなんてしてる場合なのかなあ
:登録者数は増やさないとだろ
:歌配信もしてほしいな
「歌配信はゲーム実況の次にしましょうか。やるゲームは最初に出たマルオカートにしましょう。他の名前の出たゲームはダウンロードはしておきますね」
:じゃあマルオカートは初見なのか。準備だけして未プレイのままがいいかも
:初心者狩りだ、ヒャッハー!
:最初は接待プレイだろ
:いやここは真剣にやるべき
:指示厨の腕がなりますね!
:そんなもんならすな
「む。宇宙船の操縦もできる私ですよ? 地上を這う乗り物ごとき、簡単にこなしてみせます」
:これはフラグ
:わからせ案件
:明日が楽しみだな
:それはそれとして地球救済計画は進めてくださいよ、マジで
「もちろんです。地球救済計画に関しては配信中に随時進めていきましょう。では今日は少し長くなってしまいましたが、これにて配信を終了します。チャンネル登録、高評価、SNSでの拡散等、よろしくお願いします。SNSのアカウントは概要欄に貼っておきますので、そちらのフォローもお願いします」
:おつモコスー
:挨拶系もそのうち考えないとな
「では地球救済委員会のメンバーのみなさーん、ばーいにゃ~」
:にゃ~、たすかる
:かわいい
:にゃをもっとすこれ!
【本日の成果】
同時接続数28人。チャンネル登録者数22人。SNSフォロワー数15人
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます