短夜奇譚

虚像と相反する実像の本質及び末路

　兄が彼女を紹介するというので彼がひとり暮らしをしているアパートへ菓子折りを片手に言ったのだがそこには兄一人しか居なくて、さも隣に誰かが居るかのように振る舞う兄に何と切り出そうかと考えたまま居心地の悪くなった俺は適当な理由をつけて逃亡を図ったのだけれど、玄関先まで送ってくれた兄の横の鏡越しに白い足とスカートが寄り添うように立っていたので、俺はもう二度と兄に会うことはないのだろうなという直感が頭を過った。