うしろの正面

 教育実習で担当することになったクラスの児童に昼休み、固定遊びに誘われたのでかごめかごめなんぞ懐かしいなとうろ覚えのルールを記憶の底から呼び起こして、屈んだ腰に鈍い痛みが広がるのが気になりつつも楽しんだのだが、最後に先生が鬼ねと言われたのでルールに従って円の中から「だーれだ」と言った少女の声の主を、覚えたてのクラス名簿の片っ端から探しても返ってくるのは違うよという声で、くすくすと笑う声もだんだんと聞こえなくなって私が負けを認めて振り向くと、そこに居たのは時代錯誤な赤い吊りスカートを着た見覚えのない女の子だけで、不気味なほど口の端を釣り上げた笑顔と異様なまでに鮮やかな代々の空に目を灼かれるようだった。

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