記憶の正体

 飲んだ帰りに先輩に会って、半ば強制的に心霊スポットに連れていかれたことは覚えている。

 気づけば俺は街路灯ひとつない雑木林に一人で立っていて、暗がりの中では帰り道も分からず、一気に酔いがさめてポケットを探ればスマホはきちんと収まっていたので安心したのだが、ここがどこなのか、そもそも俺をここまで連れてきた『先輩』が誰なのか、心当たりがなかった。

 ただ、ライトをつけた目の前に転がっている蛆の湧いた人型に纏わりつく布切れは、近い記憶に存在した気がしてならないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る