『シュノワ神話』

 ミュラスははなかみ人間にんげんとのあいだまれました。化粧けしょうの神で、花のいろうつくしくめる役目やくめたしていました。

 あるよるのこと、ミュラスがもりあるいていると、突然とつぜんつきはじめました。そして欠けたくら部分ぶぶんから何者なにものかがあらわれました。

 死者ししゃくにおさめている灰色はいいろの神ジェスです。ジェスはミュラスを自分じぶんの国へとりました。

 ジェスが灰色の神とばれているのは、死者のには死者の国が灰色にうつるからです。生者せいじゃには暗闇くらやみえます。そんな中でミュラスは美しい色彩しきさいたもっていました。さらわれたミュラスをあわれにおもった月がらしてくれたのです。死者たちはミュラスをあがめました。きていたころのように見えるからです。

 それはジェスもおなじでした。美しい色彩は生命せいめいあかしで、死者の国のおうにはとてもまぶしく映るのです。はじめてミュラスに出会であったときも、夜なのに光りかがやくようで、ジェスはたちまちこいをしてしまいました。

 ジェスはミュラスをおきさきにしました。

 鉱物こうぶつかられる顔料がんりょうなどはこの時にまれました。


(『シュノワ神話』。子供向けの読み物。ジェスかミュラスをさらった理由として語られる主要な後付けを最初に行なった確認できる最古のもの。似たような言説はそれ以前から存在したと思われる)

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