化け物

 自分たちの前にやってきた、うちの学園の生徒たちを追いかけてきた魔物、化け物。

 それはまさしく形容しがたき怪物であると共に、こいつはこの大魔の森林における最強の存在であった。


『おぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!』


 そんな存在へと叩き込んだ僕とギアの魔法。

 それが化け物に当たると共に彼の体を一時的に削り、その足取りを止めて見せる。


「お願い」


 それを確認すると共に僕は多くのドローンを放ち、化け物へと強襲させる。

 そのドローンを介して僕は幾つもの魔法を同時並行的に発動。

 相手を縛る麻痺の魔法で容赦なく化け物を拘束してしまう。


「戦い慣れている?私は見たことんだけど」


「んー。まぁ、少しは」


「勝ったことは?」


「ないよ。こいつとは接触するなり全力で逃げるばかりだったよ」

 

 僕はギアの言葉に即答する。

 幼少期の頃の僕はあの化け物を相手に勝ったことはない。


「……そうなんだ。どう、しようか?なんか強そうだよ。私とか初めて見る魔物だけど」


「そう、だね。僕も知らんよ、こいつは」


 この化け物が何かと言われたら知らん。

 知る由もない。


「でも、戦うしかないよねぇー。これは」


「……このまま麻痺させておくんじゃだめなの?」


「ん?もう相手に麻痺なんて聞いていないよ?」


「えっ……?」

 

「とっくに聞いていなくて、純粋に相手が動き出すのを待っているような状況じゃない?」


「えっ……?そうなの?」


「うん。そうだよ」


 この化け物の生態は知らない。

 だが、麻痺にさせるとなぜかこいつの動きは止まり、再び動き出すのは相手が逃げようとしたときである。


「えぇ……」


「だから戦うしかないよ」


「……そっか。勝てると、思う?」


「僕は勝つよ?いつまでもずっと負けっぱなしなんて僕が許せるわけないでしょう?普通に考えて」


「現実的な答えを聞きたいかも」


「半々。でも、ギアとなら勝てる気もするよ」


「……ふへへへ。そんなこと言われたら頑張っちゃうなぁ。よし!頑張ろうかっ!」


「あっ、うん」


 急に満面の笑みを見せてきたギアに困惑しながらも僕は彼女の言葉に頷くのだった。

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