押し付け?

 無事にエルデウルフの群れを倒し終えたことで課題を終わらせた僕たち三人……ではあるのだが。


「……何か来るな」


「だね」


 僕も、ギアも自分たちの方に近づいてきている人と魔物の気配を敏感に感じ取っていた。


「えっ……?何か来る、って大丈夫なんですか?」


「別に大丈夫じゃないと思うよ」


 自分へと尋ねるソフィアの言葉を否定しながら僕は軽く準備体操をして体をほぐしていく。


「……えっ?ほ、本当に。何か、大変な感じですか?」


「大変な感じだね」


 ソフィアの言葉に僕は即答する。


「えっ、えぇぇぇぇえええええええええっ!?いや、大丈夫そうじゃないなら逃げましょうよ!」


「いや、だめじゃない?」


「そうだね」


 逃げようというソフィアの言葉を僕とギアは否定する。


「ここで逃げるのはちょっと問題かなぁー?」


 そう、問題なのだ。

 今、この森の中にいるのは課題のためにいるノーバ学園の生徒たちなのである。

 そして、僕を除いてノーバ学園には貴族しかいない。

 つまりだ。

 自分に近づいてくる人と魔物の気配というのはかなりヤバいのだ。


「まっ、ちょっくら騎士になるための功績稼ぎと思えば大したことじゃないよ」


 僕が小さく独り言ともとれるような声を漏らすのと同時に自分たちの視界へと一つの魔物とそれから必死に逃げる幾人かの学生の姿が飛び込んでくる。


「ひっ!?」


 学生たちを追いかけている魔物。

 その見た目をどう形用すべきかはわからない。

 ただ黒いヘドロのようなものに覆われたその肉の塊からは時折多種多様な生物の顔が浮かびあがっており、見る者すべてにどこか根源的な恐怖を植え付けてきてくる。


「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああっ!?」


「助けてくれぇぇぇぇええええええええええええええっ!?」


 そんな化け物に追われている学生たちは慌てて悲鳴を上げる。


「……イーラに、嫌がらせしようとした身の癖に」


「まぁまぁ、助けてあげようよ」


「……イーラがいいならいいけど」


 僕はギアと共に並び立つ。


「「吹き飛べ」」


 そして、二人合わせて相手の魔物へと魔法を叩き込むのだった。

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