内容
特別授業の内容は実に簡単であった。
大魔の森林に広く生息している魔物であるエルデウルフを三体狩ってこいというものであった。
「エルデウルフかぁ……ちょっとだけ面倒だなぁ」
ギアとソフィアの二人と共に大魔の森林を歩く僕はぼやき声を漏らす。
「ん?何か問題があるんですか?」
それにソフィアが反応して声を上げる。
「あいつらってばかなり特殊でさ、傷を分け合えるんだよね」
そんなソフィアへと僕はエルデウルフの性質を語っていく。
「傷を、分け合うですか?」
「そう。分け合う。己が受けた傷を同種の個体に分け与え、ダメージを折半することが出来るんだ。三十体くらいの群れに囲まれたら結構地獄だよ……幼少期の僕は壊滅させるのにひどく苦労したよ」
首を跳ね飛ばしてもその傷を周り三体へと共有され、ダメージを三十分の一へと抑えられ、確実に切り落としたはずの首はいつの間にか元にもどっているのである。
控えめに言って地獄のような光景である。
三日三晩戦ったからね。その日は。
「……へぇー、興味、深い話だね」
「でしょー?あの原理を究明しようと昔頑張っていたんだけどうまくいかなかったんだよねー。いやー、ちょっと行けたような気もしたんだけど。残念だったわ」
「なるほど」
僕の言葉にギアは頷きながら周りを見渡す。
「まぁ、雑談はこの辺にしておいて……真面目に探したほうがいいよね」
「そうですね……嫌がらせ、とかもありそうですし」
「それが一番だよね。まったく、頭の痛い話だ……」
「そうですね」
僕たち三人は真面目に魔物の探索を始める。
「行っておいで」
ソフィアとギアの二人が探知魔法を発動する中で、僕は自作の小型ドローンを解き放つ。
「何ですか?それ」
「魔法銃と同じ僕お手製の道具だよ。こいつは自由に空を飛ぶと共に観測を可能にするんだ。このドローンから森の下を眺めてエルデウルフを探す……僕には探知魔法なんて大層なものは使えないからね。工夫してやりくりするしかないんだ」
「……工夫。いや、そっちの方がなんか凄そうですけどね?私たちの使う探知魔法よりも」
「まぁ、すごくはあるけどね?それでもまだ肉眼による確認しかできないからね。この後はサーモグラフィーとかも入れたいんだけど、まだ研究中かな」
「……本当にすごいんですね。尊敬します」
「劣等紋は道具でも駆使しないとやっていられないんだよ」
結局のところ雑談は続けながら、それでも全員真面目にエルデウルフを探していくのだった。
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