大魔の森林

 時が流れるのは一瞬である。

 特別授業の行われる日がやってきたのは本当にすぐであった。

 クラス全体で移動してやってきた大魔の森。


「なっつかしいなぁ」


 そこで僕は心の底からの言葉を漏らす。


「来たことあるの?」


 そんな自分の言葉を隣で聞くギアが疑問の声を上げる。


「まぁね……というのも、僕が生まれた村はここから近いんだよね。村を焼かれて一人で生きることになった僕が真っ先に来た場所がここ。この森でサバイバル生活を送ったんだよ、僕は」


 本当に懐かしい。

 ここで毎日生死を彷徨いながらも何とか命を繋ぎながら僕は自分の力をつけていったのである。


「……ここで、サバイバルをしたんですか?」


「えっ?村を焼かれてすぐにこの森の方に来ていたの?」


「あれ?ソフィアはともかくギアには話していなかったっけ?」


「聞かされていない。私はイーラの過去をほとんど語ってもらってない……ただ、目的を聞かされたくらいだよ」


「あれぇー?そうだったか。じゃあ、今言うよ。僕は六、七歳くらいの時に生まれ育った村を焼かれてすぐさまこの森に流れ着いて一年ほど過ごし、たまたま森の方に来ていた冒険者を助ける形で接触。その人たちと共にようやく僕は人のいる街に戻ってきた感じだよ。ギアと会ったのはそれからすぐだったと思う」


「あ、あの前にそんな壮絶な……言って、くれれば良かったのに」


「別に言ってもどうにもならなかったし……まぁ、別に僕はその頃を壮絶とも何とも思っていないし、配慮したりする必要はないよ」


 あの日々は僕が強くなるために必要不可欠な重要な日々であった。


「君たち二人は経験者である僕に付き従ってよね?この森の中で僕以上の経験を積んでいるものはいないと断言できるからね」


「……確かに、そこまでの経験があるのであれば付き従うべきですね。色々と期待して良いんですよね?」


「もっちろん」


 僕はソフィアの言葉に力強く頷く。

 

「……イーラ」


「ギアの方も今日ばかりは僕に任せてよ、ね?」


「……う、うん。君の言うことなら私はすべて従うよ」


「いや、そこまで重くなくていいけど……」


 平民と公爵家令嬢の会話じゃなかったでしょ、今の。

 立場としては絶対的に僕が下で、ギアが上なんだよ。


「あー、あー、聞こえるかぁー?」


 僕がソフィアの言葉に呆れていたところ。


「うし。まぁ、聞こえているだろう。それじゃあ特別授業について話していく」


 自分たちのクラスの担任の先生が魔法で声を拡散させながら言葉を話し始めるのだった。

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