昼食

 ギアとの模擬戦は本当に大きかったらしい。

 あの模擬戦の後、明らかにクラスメートたちの僕に対する侮りの視線が減っていた。

 そんな中で時が進んでお昼。


「再度言いますけど、本当にすごかったですね?あの一戦は」

 

 僕はソフィアと昼食をとっていた。


「まぁね……というのも、僕は結構幼い頃からギアに拾われてそのまま公爵家のお世話になっていたこともあって、色々と学んでいるから普通の平民よりは遥かに色々なものを吸収しているからね」


「へぇー。そこで繋がりがあったんですね」


「そうだよ。まぁ、純粋に僕が劣等紋を跳ね返すほどの天才だから、ってのもあるけどね!」


 僕の天才性はギアのそれにはちょっと劣るかもしれないが、負けてもいないと思う。


「すごい自信ですね。そして、しっかりとその自信に見合わない結果を出しているのは素直にカッコいいです。それにしても、何で劣等紋であそこまでの力を出せるのですか?」


「んっ?そんなに難しいことじゃないよ」


 僕は魔法陣も必要のない簡素な魔法を二つ同時に発動する。

 少量の水を出すと共に小さな炎を起こし、温水を作り出してソフィアの方へと渡す。


「一つは冷たい水を出す魔法。一つは火を出す魔法。相反する魔法ではある。だけど、それを二つ同時かつ微妙な出力の変化を加えることで温水を作り出すという本来の魔法とはちょっとズレた結果をもたらす」


「……なるほど」


「これを数千、数万単位で行うだけだよ」


 魔法銃などの道具はあくまで補助道具。

 僕の神髄は大量の魔法を組み合わせることで見せる強大な魔法である。


「えっ?そんなに大量の魔法を同時に発動できるんですか?」


「それが第五紋の強みだし。僕はちょっと外れ値な気もするけど、基本的な第五紋でも百近くは平然と使うよ。多分だけど日常生活で魔法を使うのであれば第五紋が一番便利だよ。だからこそ、家事を任せられる第五紋が多いのだろう」


 第五紋の出力が低い代わりに同時発動が出来るという性質は家事の分野において絶大な力を発揮する。

 服を洗濯しながら、掃除しながら、料理しながら、自分の紅茶を魔法で淹れてくつろぐことができるのだ。


「そこまで大量に使えれば……普通に攻撃にも使えそうですけど」


「いや、一つの魔法にかき消されるから。結局……どんなに頑張ってところでもね」


「あっ、そうなんですか……」


「そう。だから組み合わせて別の大きな魔法にするしかないのさ」


 普通の人間は魔法と魔法を組み合わせて別の魔法を作るのがまず無理なんだけどね。

 ここら辺が自分の天才性だろう。

 そんな風に僕とソフィアが話していた中。


「ちょっといいか?」


 突然。


「……アンビ」


「……っ!?」


 伯爵家の次男坊、アンビへと話しかけられるのだった。

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